最新記事

韓国社会

韓国、0歳児が特許出願 過熱する受験競争、スペック重視の行き着いた先は......

2020年11月18日(水)21時00分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

近年韓国では、奇抜な手法による受験スペックのレベルアップが密かに行われているという。(写真はイメージ) shutter_m - iStockphoto

<TOEIC850点に語学研修やインターン、ボランティア活動などまで必須といわれる韓国の就活生。そんな苛酷な競争社会では、受験スペックを上げるため、実態のない子供たちの資格取得まで......>

韓国の教育熱は、いまや世界でも有名だ。大学入試試験を、国をあげてサポートする姿は日本でもニュースで取り上げられている。遅刻寸前の受験生をパトカーで試験会場まで送り届けたり、英語のリスニングの邪魔にならないよう航空会社が発着時間を変更したりするのは、毎年の恒例行事のようになっている。

また、そんな教育戦争をベースにしたドラマ『SKYキャッスル』が、非地上波チャンネル歴代最高視聴率を更新し、社会現象を引き起すなど人々の教育に関する注目は強い。

少しでも良い大学に入学できるよう、習い事や塾通いはもちろん、英語圏へ早期留学などをさせる親も多い。さらに最近では、奇抜な手法による受験スペックのレベルアップも注目されている。それが「特許の取得」である。

今韓国で、将来の受験戦争の成功者になる準備として、子供が幼いうちから特許保持者にさせる親が増えているという。特許をもっていると、大学受験(特に理工系)はもちろん、天才児を育てる「発明英才コース」での入学に有利になるといわれている。

5歳未満なのに6件の特許を取得!

問題視されるのは、それが「名前だけの特許保持者」になっている点である。もちろん、子供ならではの奇抜なアイデアで本当に自ら発明し、特許を取った子供もいるだろう。しかし、韓国で急増している子供の特許保持者の中には、なんと0〜2歳といったまだ乳児までいるのだ。

先月6日、韓国「国会産業通常資源中小ベンチャー企業委員会」が発表した特許庁の資料「2011年~2020年特許年齢別の現況」によると、この9年の間で10歳未満の特許の登録者数は、1897名にも上ぼり、そのうち5歳未満の特許登録は159名と報告された。

さらに2件以上の特許を保有者は9人おり、なかには、なんとひとりで6件の特許を保有している5歳未満の子供もいるという。

この傾向は2004年頃から徐々に増え始め、2012年には1030件とピークに達した。ここ数年でも、毎年100件以上の未成年者の特許新規登録がされており、特に今年は、9月までに5歳以下の特許取得者が60人と、去年の9人に比べなんと6倍以上も増加している。

コロナ禍の自粛生活中に、親が子供の名前で登録するケースが増えたのだろうか。先の見えない不安定な世の中になると、自分の子供の将来も心配になる気持ちもわかるが、それにしてもすさまじい急増ぶりである。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中