韓国、0歳児が特許出願 過熱する受験競争、スペック重視の行き着いた先は......
オンライン出願が生んだ弊害
ところで、その未成年者たちが登録した特許の内容だが、大人でも理解が難しいIT技術の特許や、ARなどの新技術を駆使したものが多い。もちろん誰が見ても未就学児が開発したとは到底思えない技術であり、これらは明らかに受験スペック用の特許申請である。では、なぜ本人が開発した発明ではないのに特許出願が可能になるのだろうか?
韓国の特許出願はウェブサイトからオンラインでできる。ただ、この出願項目に登録者が本当に発明にかかわったのか確認する記載はなく、いうなれば誰でも出願できるようになっている。まさか、誰も本人以外が登録するとは考えもしなかったことから、注意書きや年齢制限もない。さらに、人数制限もないため、特許出願にグループ開発したとして、自分の子供の名前を一緒に入れる研究員もいるという。
もちろん、なかには特許取得後に問題になっている事例もある。今年8月には、忠清北道のある私立大で、教授が自分の研究に参加もしていなかった息子の名前を共同特許者に入れて出願していた。教授の息子は、後にその特許取得を反映した受験スペックで短大の医科大学に入学したのだが、入学後これは息子本人の実力ではないと問題になり裁判沙汰にまで発展した。結局、2審で懲役10カ月執行猶予2年の刑が言い渡されている。
一連の問題について韓国特許庁は「発明者について年齢で差別することはしない」という回答を繰り返しているという。
アメリカでは本人以外の出願は刑事罰に
韓国以外の国の特許申請はどのようになっているだろうか? 諸外国の多くは、発明者本人以外の登録は厳禁であり、アメリカなどは「本人の発明ではないと発覚した場合、刑事罰に値する」という誓約書にサインしなければならない場合もある。
日本の特許法によると、発明者でない者やその発明について特許を受ける権利を承継していない者が出願し、特許を受けることは第49条6号で禁止されている。また、万が一権利を承継していない者が申請した場合は、第123条1項6号により無効になると記載されている。このことから、日本や外国では韓国のような「裏技」を使って子供の受験スペックを上げることは不可能となっている。
「少しでも良い大学に、そして良い就職先に」と願う親の気持ちが生んだマル秘テクニック。親が子のより良い将来を思う気持ちは、韓国だけに限らず万国共通だが、ここまでいくと特許制度の悪用と言えるだろう。
近い将来、特許による受験スペックのレベルアップは何の意味ももたなくなってしまうだろう。本当の発明天才児が、名前だけの発明家たちに埋もれてしまう前に、審査の強化と制度の見直しを行うべきである。