ノーベル平和賞を受賞したWFPのトップはトランプ支持者
Nobel Prize-Winning program led by pro-Trump former Republican governor
ベラルーシ、ミンスクの空港に駐機するWFPの輸送機(2018年4月) Vasily Fedosenko-REUTERS
<昨年、88カ国で9700万人の飢えた人々に食糧を届けたWFPの事務局長を任命したのは、トランプ政権だった>
2020年のノーベル平和賞は、世界食糧計画 (WFP)に授与された。飢餓と闘い、世界の紛争地域で支援活動を行った実績が評価された。
WFPの事務局長はアメリカ人。共和党の政治家で、元サウスカロライナ州知事のデビッド・ビーズリーだ。受賞を知ったビーズリーは「言葉が出なかった。こんなことは生まれて初めてだ」とニジェールのAP通信に語り、「衝撃だった。とても驚いた」と付け加えた。
その後、ツイッターに動画を投稿し、WFPのチームの功績を称えた。
We are deeply humbled to receive the #NobelPeacePrize. This is an incredible recognition of the dedication of the @WFP family, working to end hunger everyday in 80+ countries.
— David Beasley (@WFPChief) October 9, 2020
Thank you @NobelPrize for this incredible honor! pic.twitter.com/bHcS0usWQa
ビーズリーは6日、国連安全保障理事会に対し、シリアやイエメンの紛争、南スーダンのような地域の危機の深刻化、それに追い打ちをかける新型コロナウイルスのパンデミックによって、政府や民間企業が介入しない限り、飢餓に苦しむ人は前年比で倍増し、2億6500万人に達する可能性があることを指摘した。
「悪いことが同時に起きている最悪の事態だ。新型コロナウイルスの大流行で、われわれは世界的な健康の危機だけでなく、世界レベルの人道主義の存続の危機に直面していることを強調したい」と、ビーズリーは訴えた。支援を要請すると共に、ロックダウンの経済的影響が、ウイルスより多くの死を引き起こす危険性があるとも警告した。
I talk about the impacts of #COVID19 a lot. That's because this crisis is far from over, especially for the families already struggling with hunger and those on the brink of it. We need to step up humanitarian assistance, not pull it back. pic.twitter.com/5KOAkRWoi4
— David Beasley (@WFPChief) October 7, 2020
受賞者はトランプゆかりの人物
今回の平和賞では、ドナルド・トランプ大統領も候補に挙がっていた。トランプが候補になるのはこれで2度目。1度目は対立していた旧ユーゴスラビアのセルビアとコソボの経済協力を仲介したという理由で、今回はイスラエルとアラブ首長国連邦の国交正常化の合意を仲介したことが理由になっている。
トランプはこの権威ある賞を受賞できなかったが、ビーズリーはトランプゆかりの人物だ。2016年の大統領選挙では、ビーズリーはトランプを支持した。そして2017年に、当時トランプ政権の国連大使だったニッキー・ヘイリーによってWFPの事務局長に指名された。
ノーベル賞委員会のベリット・レイスアンデルセン委員長は9日、ノルウェーの首都オスロのノーベル研究所でWFPの受賞を発表し、「現在飢餓に苦しむ、または飢餓の危機に瀕している何百万人もの人々に、世界の目が向いてほしい」と述べた。
「WFPは、食料の安全保障を平和の手段にするための多国間協力において重要な役割を果たしている」と付け加え、「戦争と紛争の武器」として利用されてきた飢餓との闘いにおけるWFPの功績を称賛した。
WFPは1961年に国連システムを通じて食糧を提供する試みとして設立され、1963年にスーダンで初のプログラムを開始。それ以来、常に世界で最も飢餓の被害が起きやすい地域に救いの手を差し伸べることを目標に活動している。