最新記事

コメディー

混迷の時代に笑いの力を──トレバー・ノアが考えるコメディーの役割とは

Jokes Tell the Truth

2020年10月30日(金)15時40分
H・アラン・スコット

ノアは政治風刺番組『デイリー・ショー』の司会として活躍中 JON KOPALOFF/GETTY IMAGES

<ノア曰く「コメディーは苦い薬を飲み下すためのスプーン1杯分の砂糖」だが、今年はかつてないほど「薬」が多いと言う>

今年の大混乱の文脈を読み解くのに誰よりも適したコメディアンがいるなら、それはトレバー・ノアだ。

政治風刺番組『デイリー・ショー』の司会者で南アフリカ出身のノアは、新型コロナウイルス危機からBLM(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命は大事)運動まで、外出がままならないなかで現状を理解しようとする視聴者を代弁してきた。

物事がうまくいっていないときこそ、最もリラックスして番組に臨めると、ノアは言う。「自分の出来具合は二の次。大切なのは視聴者に情報を伝えながら、笑いを忘れない率直な番組を作ることだ」

米大統領選が迫るなか、ノアいわく、右派と左派の意見はある点で一致している。「ソーシャルメディアが緊張をあおり、憎悪をかき立て、現実のニュアンスを反映しない狭い世界に人々を隔離していると、誰もが考えているはずだ」

一方で、今年は「思い込まされてきた以上に私たちはつながり合っていて、社会の最脆弱層を引き上げればより多くのことができる」と教えられたとも感じている。そう語るノアに、ライターのH・アラン・スコットが話を聞いた。

◇ ◇ ◇

──政治的であることがコメディアンの義務か。

コメディアンの義務はジョークを語ること。妙な話だが、ジョークの義務は真実を伝えることだ。コメディーは苦い薬を飲み下すためのスプーン1杯分の砂糖で、今年はかつてないほど「薬」が多い。

──早くスタジオ収録に戻りたい?

本当にラッキーなことに、私たちは自宅にいながら番組を制作できる。いま考えるのは米大統領選のこと、新型コロナ、BLM運動、雇用のこと、人類の歴史の中で最高に異常な時代に人々が正気を保つ力になるために、何ができるかということだ。

──BLM運動に反アパルトヘイト(人種隔離政策)運動との共通点はあるか。

南アフリカにおける自由を求める闘いは、有色人種に平等な権利を保障するための闘いだった。アメリカでも始まり以来、黒人は同じものを求めて闘っている。

──ドナルド・トランプ米大統領はコメディーに影響を与えているか。

大きな影響とは思わない。むしろ、トランプはニュース報道を完全に取り込み、誰もが常に彼の話をしている。それはいいことではない。ほかの多くの問題が見過ごされているということだから。

<2020年11月3日号掲載>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国CPI、2月は0.7%下落 昨年1月以来のマイ

ワールド

米下院共和党がつなぎ予算案発表 11日採決へ

ビジネス

米FRBは金利政策に慎重であるべき=デイリーSF連

ワールド

米国との建設的な対話に全面的にコミット=ゼレンスキ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題に...「まさに庶民のマーサ・スチュアート!」
  • 3
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMARS攻撃で訓練中の兵士を「一掃」する衝撃映像を公開
  • 4
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 5
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 6
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 7
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望…
  • 8
    同盟国にも牙を剥くトランプ大統領が日本には甘い4つ…
  • 9
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 10
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 6
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 7
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 8
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 9
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 10
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中