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アメリカの一流企業がビットコインを「大量購入」 その狙いは?

2020年10月17日(土)15時01分
木村兼作(公認会計士)

後に続いたのはJack Dorsey創業のSquare

Nasdaq上場会社のMicroStrategyが多額のビットコインを取得したニュースは大きな衝撃を生みました。しかも単なるレアケースでは終わりませんでした。2020年10月7日にはNYSE上場会社のSquare, Inc. が4,709 BTCを取得原価0.5億ドル(約50億円)で取得したことを発表しました

SquareといえばTwitter創業者のJack Dorseyが創業、CEOを務めるFinTechのリーディングカンパニーです。Squareは数年前からビットコインの浸透・発展に寄与する取り組みを行っており、同社が提供するアプリCash Appには簡単にビットコインを取得できる機能が搭載されています。また、Jack Dorsey(@jack)のTwitterプロフィールには #bitcoin としか書かれていないのも有名な話です。

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取得したビットコインの数はMicroStrategyに及びませんが、圧倒的な知名度を誇るSquareがその貸借対照表にビットコインを計上した意義は大きいといえます。Square はビットコイン取得の理由を以下のように説明しています:


"クリプトカレンシーの急速な進化とマクロ経済と通貨体制の観点からの前例のない不確実性を考えると、今が当社の主に米ドル建てのバランスシートを分散し、ビットコインへの有意義な投資を行うための適切な時期であると考えています。私たちは、ビットコインを世界規模で経済活動の恩恵を受けるための手段として捉えており、世界中の個人が世界的な通貨システムに参加し、自らの経済的な将来を保護するための手段であると考えています。この投資は、私たちのミッションをさらに推進するための重要なステップです。"

米国の上場会社がビットコインを取得する理由

MicroStrategyとSquareに共通するのは両者ともビットコイン取得に踏み切った理由にマクロ経済と米国ドルや日本円に代表される法定通貨システムが抱える不確実性を上げている点です。世界各国で導入されている量的緩和を含む前例のない政府の経済刺激策が法定通貨の価値の毀損につながることは容易に想像がつきます。

法定通貨の価値の毀損から会社の資産を防衛する手段としてビットコインを選択した理由としてはそのセキュリティの高さや一番長く存在するクリプトカレンシーであることによるネットワーク効果、非中央集権的で分散した性質などに加え、将来的にも 21,000,000 BTCしか生成されないというビットコインの希少性も考慮されました。

MicroStrategyやSquareのように資産保全の手段としてビットコインをBSに計上する企業は米国では今後少しずつ増えていくと考えます。一方で日本ではそれほど増えないのではないかと思っています。理由は会計基準の違いです。

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