最新記事

台湾

トランプが台湾に売った対中兵器の中身

U.S. Pushes Three Weapons Deals With Taiwan to Counter China Threat

2020年10月14日(水)17時00分
デービッド・ブレナン

HIMARSシステムは、1990年代後半から米軍が配備しているトラック型のロケットランチャーだ。オペレーターはすばやく敵に照準を定め、ロケット砲を集中的に反射して走り去ることができるため、敵の反撃を受けにくい。

誘導ミサイルの最大射程距離は約300キロで、海上の標的に対する実験にも成功した。米軍はアフガニスタンでの戦争やIS(イスラム国)と戦うイラク軍、シリアでISと戦うクルド人部隊の支援などにもHIMARSを使用してきた。

SLAM-ERは、陸海の標的を約270キロの範囲で攻撃することができる長距離空対地誘導ミサイル。すでにアメリカ、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、トルコ、韓国の軍隊に配備されている。台湾が保有するロッキードP-3オリオン海上監視機は、SLAM-ERを発射できる。

外部センサーポッドは、リアルタイムで画像とデータを地上管制局に転送する装置。台湾が保有するアメリカ製F-16戦闘機に取り付ければ、台湾軍は進行中の中国軍の動きを高画質の画像で確認することができる。

トランプ政権は今年8月、新型F-16戦闘機66機を台湾に売却する80億ドルの契約を承認した。台湾はすでにF-16戦闘機約140機を保有している。共産党機関紙人民日報系のタブロイド紙、環球時報は、この売却計画を「新たなアメリカによる挑発であり、台湾問題における越えてはならない一線を踏み越えようとし、さらなる対立を危険にさらすものだ」と伝えた。

「対話では解決できない」

中国政府は、アメリカが地域の政治に干渉し、台湾を支援することによって戦争の危険にさらしていることを繰り返し非難してきた。中国共産党の国内の人権侵害や近隣諸国との領土紛争に対する懸念が高まるなか、米中政府間の非難の応酬は、新型コロナウイルス危機でますますとげとげしさを増している。

環球時報は11日の社説の中で、台湾政府を、「中国を封じ込めるためのアメリカの新たな政策に、全面的に足並みをそろえている」と批判し、蔡英文総統は「中国に対して徹底的に敵意を向けている。この問題は、もはや対話では解決できない。悪意ある勢力は、軍事的手段によって鎮圧される必要があるかもしれない」と述べた。

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日銀が利上げなら「かなり深刻」な景気後退=元IMF

ビジネス

独CPI、4月は2.4%上昇に加速 コア・サービス

ワールド

米英外相、ハマスにガザ停戦案合意呼びかけ 「正しい

ワールド

ウクライナ大統領、武器供与の加速訴え NATO事務
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ナワリヌイ暗殺は「プーチンの命令ではなかった」米…

  • 10

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中