最新記事

台湾海峡

「中台戦争の危険が急激に高まっている」環球時報

China Media Says Risk of War With Taiwan Rising

2020年10月13日(火)18時40分
デービッド・ブレナン

中国の台湾侵攻に備えて訓練を重ねてきた台湾軍兵士(2018年1月30日) Tyrone Siu-REUTERS

<対中強硬姿勢を強めるアメリカと台湾の接近に苛立ち、軍事的挑発をエスカレートさせる中国共産党からの警告>

台湾の蔡英文総統は10月10日、台湾の民主主義は中国による侵略の可能性に対する防備を強化していると述べる一方で、台湾を自国領土と主張する中国政府に「意義深い対話」を呼びかけた。

台湾独立を掲げる民主進歩党の主席で、1月の総統選挙で2期目に再選された蔡は、中華民国の建国記念日にあたる「双十節」の祝賀式典で、穏やかになだめるような口調で演説した。つい1カ月前には、台湾海峡で中国が軍事演習をおこなったばかりだ。

しかし中国国営メディアは、蔡による外交交渉の訴えを一蹴した。批判の急先鋒にいるのが、中国共産党の機関紙「人民日報」の姉妹紙である環球時報だ。蔡は演説で世界を「だまそうとしている」と同紙は述べ、ここ数カ月で中台間の戦争の危険が「急激に」高まっていると主張した。

中国共産党は「一つの中国」の原則にもとづいて台湾の領有権を主張。外交的手段が失敗に終わった場合には、軍事力によって台湾の支配権を手に入れると明言している。

蔡は10日の演説のなかで、台湾政府は「軽率な行動をとるつもりはなく」、「中台関係の安定を守るために力を注いでいく」と述べた。

軍事力で再統一

蔡は、中国政府との「意義深い対話を促進するために協力する用意がある」と語った。中台関係は最近、新型コロナウイルスのパンデミックや、香港の民主派活動家に対する中国の締め付け、新疆ウイグルでのイスラム系少数民族の弾圧、そして台湾海峡で継続される軍事演習をめぐって緊迫している。

中台をめぐる状況は「深刻に悪化している」と、11日の社説で主張した環球時報は蔡を非難し、「対話促進という考えを、時間稼ぎ戦術のための『オリーブの枝』として利用し、国際社会を欺いて同情を集めようとしている」と述べた。そして、蔡政権を「日和見主義の政治家の群れ」と切り捨てた。

中国共産党内の好戦的な意見を外に広めるためにしばしば使われる環球時報は、この台湾海峡で中国が最近行っている軍事演習について、「『分離』を求める勢力に対する明確な警告」と賛美した。台湾の独立派のことを指してのことだ。

「蔡政権の挑発のせいで、戦争の危険は急激に高まっている。蔡政権は崖っぷちに立っている」と同紙は続けた。

環球時報はさらに、中国人民解放軍が台湾海峡で最近実施した陸海空軍共同の上陸演習の映像も公開。この演習を、「台湾の分離主義者に対抗し、再統一を推し進めようとする中国の高い能力と確固たる意志」の証と表現した。

「この演習は、中国人民解放軍が台湾の支配権を掌握する際に威力を発揮する無人機、水上および地上車両を中心に行われた」と、同記事は続けている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中韓、米関税への共同対応で合意 中国国営メディア

ワールド

米を不公平に扱った国、関税を予期すべき=ホワイトハ

ワールド

トランプ氏、5月中旬にサウジ訪問を計画 初外遊=関

ワールド

ルペン氏に有罪判決、次期大統領選への出馬困難に 仏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中