最新記事

韓国

韓国・動物愛護センター「はねられた犬を保護、治療費が払えず困ってる」 まさかの募金詐欺が続々

2020年10月12日(月)20時10分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

募金した人たちが集団訴訟へ

ところが国民請願に投稿された内容を読むと、動画の中で保護したとされる野良猫はすべて、撮影用にペットショップなどで購入した猫であったという。また演出のため、動物にエサを与えず痩せさせたり、危害を加えたりしたことなどが指摘され、さらにチャンネル動画の中でも人気のあったマスコット犬・ジョルグちゃんの場合、撮影以外の時間は狭いゲージの中に閉じ込められていたという。

また、請願者は「ハムスターを撮影用に購入したが、その後猫たちに噛まれて殺してしまった後、何度か同じ種類のハムスターを買い足している」とし、「このような人物が獣医師になってはならない。動物やその飼い主たちのためにも獣医大からの除籍を要求する」と主張している。

この請願が投稿された4日後には、集団告訴サイト「화난사람들(怒れる人達)」に、「ガプス牧場募金詐欺の告訴人募集」ページがアップされ、これまでかかわった人や募金を行った人たちを集め集団訴訟しようという活動が開始された。

その後、この人びとは、ガプス牧場相手に詐欺と横領、動物保護法違反などで警察に訴状を提出し、ガプス牧場のチャンネルは現在閉鎖されている。

「安楽死行わない」保護センター、募金の使い道は

このように韓国での動物愛護センターは、個人や民間が活動していることが多い。その中でも規模が大きく、マスコミにもたびたび取り上げられていた有名な動物愛護センター「Care」が、昨年3月に警察に事情聴取された事件は衝撃だった。

「Care」は2011年以降「安楽死を絶対に実行していない」と主張する"NO Killシェルター"として有名だった。「保護した動物は、たとえ里親が見つからなくても最後まで面倒を見る」と言い続け、その精神に賛同した多くの人たちが募金を続けていた。

しかし、去年内部告発によって2015年から200頭以上の数多くの動物たちが安楽死させられていた事実が明らかになった。韓国のニュースでも大きく取り上げられ、その後保守系市民団体である自由連帯や、自由大韓保国団などが続いて警察に告訴状を提出する事態となった。

センター代表者であり、マスコミにも多く出演していたパク・ソヨン氏は、警察の取り調べに対し「過去に安楽死せざるを得ない健康状態の動物がいた」ことを認め、「No killは嘘だった」と発言した。

これまでセンターを支援してきた人たちは、動物の保護に使ってもらおうと募金したのに、そのお金が動物たちを安楽死させるための薬に使用されていたのだ。この事実を知ったときのショックはどれほどだっただろう。これはまさしく、親切心を利用した悪質な詐欺である。

その後、動物愛護センター「Care」はセンター代表を交代し、以前の50%の規模で運営中だ。今現在600頭の保護動物を飼育しているという。

募金詐欺が本当の募金の障害に

可愛い動物は注目を集めやすく、彼らが辛い状況にあると分ると同情心から助けたくなる。しかし、世の中にはその親切心を利用して、嘘をでっちあげ悪事を働こうとする人も少なからず存在する。

先日、筆者もあるSNSコミュニティーで、飼い猫の癌手術費用募金の呼びかけを目にした。同じ愛猫家として少額ながら募金しようかと考えた瞬間、この募金詐欺ニュースが頭をよぎり、躊躇してしまった。あの猫は本当に存在するのだろうか? 本当に手術が必要な猫だったのだろうか......。

SNSが発達し、救助が必要な動物たちに手を差し伸べる人たちが増え、手軽に援助できる世の中になるのは素晴らしいことだ。今後は、募金や真実の透明性がもっと明るみになるよう工夫され、本当に困っている動物やその保護者を助けられる仕組みになるよう期待している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ次期米大統領、ウォーシュ氏の財務長官起用を

ビジネス

米ギャップ、売上高見通し引き上げ ホリデー商戦好発

ビジネス

気候変動ファンド、1―9月は240億ドルの純流出=

ワールド

米商務長官指名のラトニック氏、中国との関係がやり玉
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中