非常に珍しい、右側がオスで左側がメスの鳥が発見される
右半身がオス、左半身がメスとみられるムネアカイカルが発見された...... (Annie Lindsay)
<ペンシルベニア州のパウダーミル自然保護区で、非常に珍しい、右半身がオス、左半身がメスとみられるムネアカイカルが発見された...... >
米カーネギー自然史博物館(CMNH)傘下のパウダーミル鳥類研究センター(PARC)は、2020年9月24日、ペンシルベニア州南西部ウェストモアランド郡レスターにあるパウダーミル自然保護区で、右半身がオス、左半身がメスとみられるムネアカイカルを発見した。
遺伝子的に右側がオス、左側がメスの「雌雄モザイク」
ムネアカイカルは、性別によって体の大きさや色彩など、個体の形質が異なる「性的二形」であり、オスとメスで羽の色が異なる。このムネアカイカルは、右側の翼の内側がピンクで、右胸に斑点がみられ、右翼の羽が黒い一方、左側の翼の内側は黄色で、翼の羽は茶色い。
つまり、このムネアカイカルは、オスの特徴とメスの特徴が明らかな境界をもって混在する「雌雄モザイク」であり、おおむね体の中心を境界として、遺伝子的に右側がオス、左側がメスであるとみられている。
雌雄モザイクは、鳥類のほか、爬虫類やチョウでも確認されているが、非常に稀だ。パウダーミル鳥類研究センターでは、1962年以来、パウダーミル自然保護区で年間およそ1万3000羽の鳥類標識調査を実施しているが、これまでの調査記録を蓄積したデータベースで、雌雄モザイクの鳥の記録は10件に満たない。
鳥類標識調査プログラムのマネージャーを務めるアニー・リンジーさんは「調査チームはみな、この希少な個体との出会いに興奮し、生涯一度の経験を味わっている」と、今回の発見に対する驚きと喜びを語っている。
左側の卵巣で、子どもを産むことが可能?
雌雄モザイクの仕組みについては、完全に解明されていない。2010年に学術雑誌「ネイチャー」で発表された研究論文では「2つの精子が2つの核を持つ卵子と同時に受精し、これらの核が別々に分裂しはじめて、それぞれが独自の性別を持ち、一方がオスの染色体、他方がメスの染色体を発現する」との説を示している。
雌雄モザイクの鳥の繁殖能力の有無についても、まだ明らかになっていない。一般に、鳥は左側の卵巣のみが機能する。今回発見された雌雄モザイクのムネアカイカルは、左側がメスであることから、理論上は、オスと交尾できれば、子どもを産むことが可能なのではないかとみられている。
また、このムネアカイカルが繁殖できるかどうかは、オスのように鳴き、他のメスを惹き付けたり、他のオスの縄張り宣言を促すことができるかにもよる。
2003年の研究論文では、雌雄モザイクのキンカチョウがメスの周りでオスのように鳴いたことが示されたほか、2017年6月から7月にかけて雌雄モザイクのワキアカトウヒチョウの繁殖行動が確認されているが、このムネアカイカルについては、今後、さらなる観察と研究が必要だ。