アメリカ大統領選、候補者に「万が一の事態」が起きたらどうなる?
ジョージワシントン大学政策運営大学院のララ・ブラウン大学院長は、候補者が死亡した場合、投票先を州法で拘束される選挙人が新たな候補に投票先を変えることが認められるべきか否か、対立政党が訴訟を起こすとしても不思議はない、と話す。
「最高裁がこのような論争をどのように処理するかという点が、今まさに最も興味深い問題になりつつある」とブラウン氏は語る。
だが、ロヨラ・メリーマウント大学法科大学院のジャスティン・レビット教授は、特定の候補者が一般投票で勝利したことが明らかな場合には、政党が有権者の意志を無視する試みに出る可能性は低いとの見方だ。
<選挙人投票の後、連邦議会がその結果を承認する前に、勝利した候補者が死亡した場合はどうなるか>
選挙人による投票が済んでも、さらに1月6日に召集される連邦議会が開票結果を承認しなければならない。選挙人投票の過半数を獲得した候補者がその後死亡した場合、連邦議会が事態をどのように収拾するかは必ずしも明確ではない。
合衆国憲法修正第20条では、次期大統領が就任日前に死亡した場合には、次期副大統領が大統領になると規定している。だが、ある候補者が正式に「次期大統領」になるのが、選挙人による投票で勝利した時点なのか、連邦議会が開票結果を承認した時点なのかは法律的に結論が出ていない。
連邦議会が死亡した候補者に対する投票を無効とし、したがって過半数を獲得した候補が誰もいないという結果になれば、次期大統領の選任は下院に委ねられ、選挙人投票の上位3人の中から選択することになる。
こうした不測の事態による選出においては各州の代表がそれぞれ1票を行使する。下院では民主党が過半数を占めているが、50州のうち26州を共和党が握っているため、代表数では、現時点において共和党が優位に立っている。
ただし、下院435議席はすべて11月の選挙で改選されるため、次期連邦議会の勢力分布がどうなるかはまだ分からない。
これまでのところ、勝利した候補者が選挙後・就任前に死亡した例は1件もない。最もそれに近い例は、1872年11月29日に死亡したホレス・グリーリー候補のケースだ。ユリシーズ・グラント候補に敗れたが、グリーリー候補は選挙人66票を獲得。しかし、死亡によって、その票は主として同じ陣営の副大統領候補及び他の弱小候補に分割される結果となった。
<連邦議会が選挙人投票の結果を承認した後に、次期大統領が死亡または再起不能となった場合はどうなるのか>
合衆国憲法によれば、次期大統領は、連邦議会が選挙人投票の結果を承認してから2週間後、1月20日の就任式で就任宣誓を行う。次期大統領が死亡した場合には、次期副大統領が1月20日に就任宣誓を行う。
(翻訳:エァクレーレン)