「非常に申し訳ない」韓国公務員の射殺を謝った金正恩の真意
だが重要なのは、これが可逆的な出来事だったという点だ。
北朝鮮の挑発を受けて、文は国家安全保障チームの人事を刷新。専門家のみるところ、北への関与にこれまでより積極的な顔触れになった。
だが、公務員射殺事件は性格が違う。金自身が命令を下したわけではないから、北の強圧的な戦術の一部ではない。
しかも、この事件は「可逆的」なものではない。だから金は緊張をすぐに抑えるため、異例の謝罪を行ったのだ。事件後に韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相は、文政権の対北関与策が継続される旨の発言をしている。
2つの事件の違いから、金の謝罪の真意が明らかになる。北朝鮮は危機をつくり出すのがうまく、常にほぼ台本どおりに事を運ぶ。国連の制裁決議を逃れたい北朝鮮としては、文を味方に付けようという計画が突発的な事件で台無しになるのを望んではいない。
こう考えると金の迅速な謝罪は誠意の表れというよりも、あくまで現状を維持し、突発的事件の衝撃を弱める狙いがあったとみるべきだ。金の当面の目標は、11月の米大統領選まで南北関係を安定させることだからだ。
From thediplomat.com
<2020年10月13日号掲載>
10月13日号(10月6日発売)は「中国ダムは時限爆弾なのか」特集。世界最大の三峡ダム決壊説の真偽を考える。[PLUS]「無責任」中国のダム輸出。
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