米大統領選が混沌 ニュース番組に広告スポンサー殺到
米国民はニュースにくぎ付け
今年のテレビニュースは既に視聴者が急増している。NBC、CBS、ABCではいずれもここ数年で最多。スポーツ番組からニュース番組に視聴者が流れた影響もある。調査会社ニールセンによると、フォックス・ニュースは今年7月と8月、9月にプライムタイムの視聴率としては業界最高を記録した。
消息筋によると、NBC、MSNBC、ABC、CBS、フォックス・ニュースでは第1回討論会の広告枠を完売した。ただ、同討論会の視聴者数は7310万人だったと推計されており、過去最多だった4年前の8400万人を下回ったが、これはオンライン動画配信の増加などを反映したかもしれない。
ABCは本選当日夜と10月7日予定の副大統領候補者討論会の広告枠を完売しただけでなく、10月15日と22日の残りの大統領候補者討論会の広告枠もほぼ売れた。NBCとMSNBC、フォックス・ニュースも選挙当日夜と残りの討論会の広告が完売に近い。
スタンダード・メディア・インデックスによると、政治やニュースへの視聴者の関心のおかげで今年6-8月期の広告収入はCNNで前年同期比68%増、フォックス・ニュースで46%増。S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのメディア調査部門ケイガンによると、今年の年間広告収入はフォックス・ニュースが前年比8.2%増、CNNが5.2%増と見込まれる。
コンサルティングのカンターのデジタルメディア調査責任者グレゴリー・アストン氏は、本選の前後でニュース番組の需要は盛り上がり、スポンサーは視聴が集中する消費者をターゲットにすることになるとみる。
<抗議、暴動などの関連番組は敬遠も>
メディア専門家によると、投票日後に起き得る選挙への抗議活動や暴動を見越して広告を見送るスポンサーもいるかもしれない。
既にスポンサーの多くは新型コロナウイルスや「ブラック・ライブズ・マター」運動を話題にする番組は敬遠している。トランプ氏が政権交代の場合は平和的に応じる意思を明確にしておらず、第1回討論会でも極右グループ「プラウド・ボーイズ」に「待機せよ」とのメッセージを送ったことは、抗議活動がこれから増える可能性を示唆している。
広告代理店グループMのビジネスインテリジェンス部門グローバル責任者ブライアン・ウィーザー氏は「投票日前後にニュース関連番組に広告を計画するスポンサーは、異なるシナリオを注意深く想定する必要がある。大半のシナリオは好ましいものではないためだ」と指摘した。
フォックス・ニュースのコリンズ氏は、大統領選後1週間の広告枠を購入した企業で、暴動に懸念を表明したり、これに関連して値引きを求めたりする動きはないと言明。
ただ消息筋によると、NBCでは広告企画担当者から、共和党寄りや民主党寄りといった「偏った」印象の広告になることを懸念する声がある。
一方で、広告に昨今の「社会の分断」が影響するのを回避し、より多くの視聴者の関心を引きつけることから恩恵だけを得るというのは虫が良すぎるとの声も広告専門家から聞かれた。
(Helen Coster記者)
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