最新記事

2020米大統領選

米大統領選が混沌 ニュース番組に広告スポンサー殺到

2020年10月3日(土)12時05分

米国民はニュースにくぎ付け

今年のテレビニュースは既に視聴者が急増している。NBC、CBS、ABCではいずれもここ数年で最多。スポーツ番組からニュース番組に視聴者が流れた影響もある。調査会社ニールセンによると、フォックス・ニュースは今年7月と8月、9月にプライムタイムの視聴率としては業界最高を記録した。

消息筋によると、NBC、MSNBC、ABC、CBS、フォックス・ニュースでは第1回討論会の広告枠を完売した。ただ、同討論会の視聴者数は7310万人だったと推計されており、過去最多だった4年前の8400万人を下回ったが、これはオンライン動画配信の増加などを反映したかもしれない。

ABCは本選当日夜と10月7日予定の副大統領候補者討論会の広告枠を完売しただけでなく、10月15日と22日の残りの大統領候補者討論会の広告枠もほぼ売れた。NBCとMSNBC、フォックス・ニュースも選挙当日夜と残りの討論会の広告が完売に近い。

スタンダード・メディア・インデックスによると、政治やニュースへの視聴者の関心のおかげで今年6-8月期の広告収入はCNNで前年同期比68%増、フォックス・ニュースで46%増。S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのメディア調査部門ケイガンによると、今年の年間広告収入はフォックス・ニュースが前年比8.2%増、CNNが5.2%増と見込まれる。

コンサルティングのカンターのデジタルメディア調査責任者グレゴリー・アストン氏は、本選の前後でニュース番組の需要は盛り上がり、スポンサーは視聴が集中する消費者をターゲットにすることになるとみる。

<抗議、暴動などの関連番組は敬遠も>

メディア専門家によると、投票日後に起き得る選挙への抗議活動や暴動を見越して広告を見送るスポンサーもいるかもしれない。

既にスポンサーの多くは新型コロナウイルスや「ブラック・ライブズ・マター」運動を話題にする番組は敬遠している。トランプ氏が政権交代の場合は平和的に応じる意思を明確にしておらず、第1回討論会でも極右グループ「プラウド・ボーイズ」に「待機せよ」とのメッセージを送ったことは、抗議活動がこれから増える可能性を示唆している。

広告代理店グループMのビジネスインテリジェンス部門グローバル責任者ブライアン・ウィーザー氏は「投票日前後にニュース関連番組に広告を計画するスポンサーは、異なるシナリオを注意深く想定する必要がある。大半のシナリオは好ましいものではないためだ」と指摘した。

フォックス・ニュースのコリンズ氏は、大統領選後1週間の広告枠を購入した企業で、暴動に懸念を表明したり、これに関連して値引きを求めたりする動きはないと言明。

ただ消息筋によると、NBCでは広告企画担当者から、共和党寄りや民主党寄りといった「偏った」印象の広告になることを懸念する声がある。

一方で、広告に昨今の「社会の分断」が影響するのを回避し、より多くの視聴者の関心を引きつけることから恩恵だけを得るというのは虫が良すぎるとの声も広告専門家から聞かれた。

(Helen Coster記者)



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中