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学生世代の約3割が抱える数百万円の借金が、未婚化の一因に?

2020年10月14日(水)13時40分
舞田敏彦(教育社会学者)

1998年では、同世代中の68.3%が高等教育機関の学生とみなせるので、<表1>の数値を使うと同世代ベースの奨学金利用率は以下のようになる。

・無利子 = 68.3×(39/390)= 6.8%
・有利子 = 68.3×(11/390)= 1.9%

なるほど、微々たるものと言えなくもない。しかし2017年では様相が変わっている。以下の図は、同世代中の学生比率、奨学金利用率を面積グラフで視覚化したものだ。

data201014-chart02.jpg

2017年では同世代の8割が学生で、29.1%が奨学金を借り、17.8%が有利子のローンまがいの借金をしていることが分かる。同世代の3人に1人が奨学金を借りていて、在学中の借入総額で多いのは200~300万円ほどだ。結婚しようという相手が多額の借金を抱えていることなど、珍しくも何ともない。

当の若者もそれを知ってか、婚活イベントでは「奨学金、いくら借りてます?」が定番の質問だそうだ。正直に話すと婚姻に至らないので借金を隠し、後でそれが発覚する。「新婚早々、夫が奨学金200万円を借りていることが分かった」。繰り返すが、こういうことはザラにあるはずだ。

私費依存型教育の病理

若者の未来を広げるはずの奨学金が、実際は彼らをがんじがらめにし、果ては未婚化・少子化につながっているとしたら、何とも皮肉なことだ。<図1>のグラフの通り、同世代ベースで見ても、奨学金を借りている人の率は高い。若者の3人に1人が数百万円の借金を背負っている。結婚の足かせにならないとは考えにくい。

高等教育の機会を多くの若者に開くのはいいが、借金を負わせることでそれを進めると、人の人生を狂わせると同時に、社会全体にとっても逆機能となる。残念なことに、今の日本社会はこういう病に陥っていると診断せざるを得ない。私費依存の教育拡張の病理だ。

教育を受けることは権利であり、機会均等の策の中核は奨学金だ。この原点に立ち返り、真の給付型奨学金の枠を増やすべきで、貸与型の奨学金は正直に「学生ローン」と名乗らねばならない。この点については前にも書いた(「日本は事実上の『学生ローン』を貸与型の『奨学金』と呼ぶのをやめるべき」2020年8月5日、当サイト掲載)。

今は3人に1人だが、若者の4割、5割が数百万円の借金を背負って社会に出るのが当たり前になったりしたら、大変なことだ。未婚化はますます進み、経済的徴兵(経済格差によって貧困層が軍隊などに実質的に入らざるを得ない状態)などもはびこるようになるだろう。すでにその兆候はあり、「**すれば奨学金返済免除」という類の政策をよく聞く。

教育は当人や国の可能性を開くものだが、費用負担の在り方を間違うと、双方にとって良からぬことになる。

<資料:文科省「奨学金事業の充実」
    文科省『学校基本調査』

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