最新記事

2020米大統領選

トランプ「土壇場の大逆転」2度目は空振り? 前回と異なる要因

2020年10月17日(土)12時49分

2016年の米大統領選で、ドナルド・トランプ氏はぎりぎりまで投票先を決めかねていた有権者を取り込む形で、誰もがあっと驚くような勝利を得ることができた。写真はマイアミで行われたタウンホールに出席したトランプ氏(2020年 ロイター/Carlos Barria)

2016年の米大統領選で、ドナルド・トランプ氏はぎりぎりまで投票先を決めかねていた有権者を取り込む形で、誰もがあっと驚くような勝利を得ることができた。しかし、今回はトランプ氏にとってこうした有権者が救いの神となりそうにないことが、最新のロイター/イプソス世論調査から読み取れる。

11月3日の投票日まで3週間を切った現在、トランプ大統領は全国的にも激戦州でも、民主党候補のバイデン前副大統領に支持率でリードを許す厳しい状況にある。そこでトランプ陣営は、土壇場で態度を決める有権者がトランプ氏に大挙投票し、起死回生の再選をもたらすシナリオに期待をつないでいる。

だが、今月9─13日に行われたロイター/イプソス調査を見ると、投票先をまだ決めていない人の数は4年前に比べてずっと少なく、彼らがトランプ氏とバイデン氏のどちらを選びそうかという点でも五分五分だ。

だから、足元でバイデン氏が全国支持率でトランプ氏に10%ポイントの差をつけ、激戦州でもやや優勢である事実が、そのまま選挙戦の行方を決めることになるだろう。

バージニア大学センター・フォー・ポリティクスの選挙分析専門家、カイル・コンディック氏は「劣勢に立たされたトランプ氏は、態度未定有権者をバイデン氏よりもはるかに多く取り込まなければ追い上げられない。それができないとすれば、バイデン氏のリードは揺るがない」と話した。

トランプ氏にとってさらに不利な材料は、16年に比べて期日前投票数が格段に多くなっていることだ。新型コロナウイルスのパンデミックが影を落とし、投票日の混雑を避けようとする有権者が増えたためとみられる。

フロリダ大学の「USエレクションズ・プロジェクト」によると、16日までに期日前投票を済ませた人は約1500万人に上る。4年前は同じ期間で約140万人だった。

ロイター/イプソス世論調査では、既に投票先を決めている人が多いことも分かっており、この面からも終盤の逆転劇が起きる確率は低下している。「誰に投票するか分からない」や「第3の候補を考えている」と答えた有権者は、全体の8%前後にとどまった。

4年前のこの時期は、トランプ氏と当時の民主党候補ヒラリー・クリントン氏のどちらに票を入れるか迷っていた人は、その2倍以上存在し、それまでクリントン氏が優位にあった選挙戦に波乱要素を加える格好になった。

そして、最後の週に態度未定者の55%がトランプ氏、36%がクリントン氏を選んだことが、投票日当日の世論調査で判明。これがトランプ氏を当選に導く重要な役割を果たした。

特にフロリダ、ミシガン、ペンシルベニアといった激戦州で態度未定者の過半数がトランプ氏支持に回った。その結果、トランプ氏の得票率がクリントン氏を上回ったと言っても、その差はミシガンとペンシルベニアではわずか1%ポイント未満、フロリダは2%ポイント未満だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中