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デジタル通貨を発行しても人民元の地位が上がらない理由

CHINA’S NEW DIGITAL CURRENCY

2020年9月18日(金)18時00分
エスワー・プラサド(コーネル大学教授)

一部には、中国にも法の支配があり、一党独裁にも権力の暴走を防ぐ自己修正メカニズムが含まれているとの主張がある。だが中国における三権分立は制度的に確立されておらず、そのチェック・アンド・バランスの有効性には疑問符が付く。

一方でアメリカのトランプ政権は、民主的な諸制度を弱体化させ、法の支配を無視し、中央銀行の独立性を損なうようなことばかりしている。それでも相対的に見ればアメリカの優位は揺るがない。経済規模でも資本市場の流動性でもアメリカが上だし、制度的な枠組みもしっかりしている。だから米ドルは信頼され、今後も主要な準備通貨であり続けるだろう。

中国政府が国内金融市場の改革を進め、資本移動の制限を取り除いていくなら、人民元の国際的な地位は上がる。デジタル通貨の発行はその追い風となる。ただし、基軸通貨としての米ドルの地位を揺るがすほどの大風にはなるまい。

©Project Syndicate

<本誌2020年9月22日号掲載>

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【関連記事】中国とのライバル関係を深刻に扱うべきでない理由

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9月22日号(9月15日発売)は「誤解だらけの米中新冷戦」特集。「金持ち」中国との対立はソ連との冷戦とは違う。米中関係史で読み解く新冷戦の本質。

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