最新記事

米中サイバー戦争

米中新冷戦の主戦場はサイバー攻防戦

U.S., China's Cold War Is Raging in Cyberspace

2020年9月17日(木)17時45分
ナビード・ジャマリ、トム・オコナー

米中新冷戦の最も熾烈な戦場は仮想空間だ namussi-iStock.

<軍事的、経済的優位を確保するためには、卑劣な手段も厭わず他国の技術を盗む中国と、それを防ごうとするアメリカの最前線>

世界の2大超大国の覇権争いはかつてない規模までエスカレートしており、そこでは米政府と企業が束になってかかっても防ぎきれない「壮大な泥棒」、即ち中国政府系ハッカーが幅を利かせている。

中国政府は外国の知的財産を組織的かつ大量に盗んでいるという批判を躍起になって否定する。しかし、米中が技術的・軍事的な優位をめぐって熾烈な競争を繰り広げる今、中国の組織的なサイバー攻撃でアメリカが被る損失は年間約5000億ドルにも上ると、米防諜機関のトップは言う。

「中国による知的財産の盗用で、アメリカは年間約5000億ドルの被害を受けている」と、米国家防諜安全保障センターのウィリアム・エバニナ長官は本誌に語った。「これは中国がアメリカの25%の世帯から、1世帯に付き毎年4000ドル~6000ドルを盗んでいるのに等しい」

11月の米大統領選を目前に控えた今、米中関係は悪化の一途をたどっている。ドナルド・トランプ米大統領は支持基盤向けに新型コロナウイルスの感染拡大を中国のせいと言い切るなど対中強硬姿勢をアピール。米政府高官は経済や通商、南シナ海などにおける領有権争い、中国の少数民族ウイグル人の人権問題などで日々、中国批判を繰り返している。

だが、米中の最も熾烈な攻防戦が繰り広げられているのはサイバー空間だ。

パソコンごと盗むことも

FBIは、アメリカの政府や企業を標的にした中国絡みのハッキングやスパイ活動の増加は、中国当局の指示によるものだとみている。クリストファー・レイFBI長官は今年7月、現在捜査中の5000件のスパイ事件の半数近くは中国絡みだと述べた。

「中国絡みのスパイ事件が増えているのは、中国共産党のせいだ」と、FBIは本誌の取材に書面で回答した。「中国共産党は、軍事力と経済規模で優位に立つため、アメリカの知的財産と機密情報を盗む活動を続けている」

FBIによれば、中国人ハッカーの標的になるのは、情報技術、通信ネットワーク技術、軍事技術など。主な手法はサイバー攻撃だと言われているが、「中国は知的財産の盗用、米企業の合法的買収、データの入手を目的とする(パソコンなどの)物理的な盗みといった手法も多用している」。

米政府が総力を挙げても、この脅威を封じ込めるのは難しい。

「連邦政府は民間部門や地方自治体とも連携し、それらの出先機関も総動員することで、より効率的に中国によるスパイ案件を特定」することに努めていると、FBIは指摘する。「FBIは何年も前から中国のスパイ活動について警告し、民間部門や学界とも積極的に連携し、脅威に対処してきた」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中