次期首相にのしかかる3つの難題──ポスト安倍の日本を待ち受ける未来
Japan After Abe
アベノミクスは、女性の社会進出も推進してきた。子供の保育施設を拡充したり、企業における女性管理職の比率目標を示したりと、強力な施策が次々と打ち出されてきた。人材採用時の男女比を改善するイニシアチブも取られてきた。しかしこの領域では、日本の女性はまだ大きな障壁に直面している。
外交では安倍に出番も?
日本経済の生産性をさらに高めるためには、雇用の流動性を高めることが不可欠だ。これは外国人受け入れ政策の改正なしにはあり得ない。2018年に改正出入国管理法が成立して、外国人技能労働者の雇用機会が拡大したことは第一歩にすぎない。活発な経済を維持するためには、適切な人材が日本で働きたいと思うような施策を今後も打ち出していく必要がある。
次期首相は、安倍の経済政策の多くを引き継ぐかもしれないが、政治的にセンシティブな目標は先送りにするかもしれない。例えば自民党は、憲法改正を基本方針の1つに掲げてきたが、コロナ禍や経済環境を考えると、新政権が改憲を最優先課題に据えるとは考えにくい。
外交面では、次期首相は韓国など近年関係がこじれてきた国々との問題に取り組む機会があるかもしれない。ただ、この領域では今後も安倍が重用される可能性が高い。とりわけ安倍は、ドナルド・トランプ米大統領と親しい関係を築いてきたから、11月の米大統領選でトランプが再選されれば、一段と重要な役割を果たすかもしれない。
自民党は次期総裁選を14日に実施することを決めた。(編集部注:14日の自民党総裁選で菅義偉官房長官が新総裁に選出された)だが日本の今後の方向性について有権者が本格的な議論を聞くことができるのは、来年10月の衆議院議員任期満了までに行われる総選挙まで待たなければならないだろう。
つまり安倍が去った後も、日本はしばらく安倍路線を歩むことになりそうだ。
<本誌2020年9月22日号掲載>
9月22日号(9月15日発売)は「誤解だらけの米中新冷戦」特集。「金持ち」中国との対立はソ連との冷戦とは違う。米中関係史で読み解く新冷戦の本質。