最新記事

日本政治

次期首相にのしかかる3つの難題──ポスト安倍の日本を待ち受ける未来

Japan After Abe

2020年9月15日(火)19時00分
シーラ・スミス(米外交問題評議会上級研究員)

アベノミクスは、女性の社会進出も推進してきた。子供の保育施設を拡充したり、企業における女性管理職の比率目標を示したりと、強力な施策が次々と打ち出されてきた。人材採用時の男女比を改善するイニシアチブも取られてきた。しかしこの領域では、日本の女性はまだ大きな障壁に直面している。

外交では安倍に出番も?

日本経済の生産性をさらに高めるためには、雇用の流動性を高めることが不可欠だ。これは外国人受け入れ政策の改正なしにはあり得ない。2018年に改正出入国管理法が成立して、外国人技能労働者の雇用機会が拡大したことは第一歩にすぎない。活発な経済を維持するためには、適切な人材が日本で働きたいと思うような施策を今後も打ち出していく必要がある。

次期首相は、安倍の経済政策の多くを引き継ぐかもしれないが、政治的にセンシティブな目標は先送りにするかもしれない。例えば自民党は、憲法改正を基本方針の1つに掲げてきたが、コロナ禍や経済環境を考えると、新政権が改憲を最優先課題に据えるとは考えにくい。

外交面では、次期首相は韓国など近年関係がこじれてきた国々との問題に取り組む機会があるかもしれない。ただ、この領域では今後も安倍が重用される可能性が高い。とりわけ安倍は、ドナルド・トランプ米大統領と親しい関係を築いてきたから、11月の米大統領選でトランプが再選されれば、一段と重要な役割を果たすかもしれない。

自民党は次期総裁選を14日に実施することを決めた。(編集部注:14日の自民党総裁選で菅義偉官房長官が新総裁に選出された)だが日本の今後の方向性について有権者が本格的な議論を聞くことができるのは、来年10月の衆議院議員任期満了までに行われる総選挙まで待たなければならないだろう。

つまり安倍が去った後も、日本はしばらく安倍路線を歩むことになりそうだ。

From Foreign Policy Magazine

<本誌2020年9月22日号掲載>

20200922issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

9月22日号(9月15日発売)は「誤解だらけの米中新冷戦」特集。「金持ち」中国との対立はソ連との冷戦とは違う。米中関係史で読み解く新冷戦の本質。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

都区部コアCPI、1月は+2.5%に伸び拡大 生鮮

ビジネス

失業率12月は2.4%に改善、就業者増加 求人倍率

ビジネス

日経平均は小幅続伸で寄り付く、米株高を好感 ハイテ

ビジネス

米ビザ10─12月期、利益が予想上回る 年末消費が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 10
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中