西側メディアを装うロシアのプロパガンダ戦略 旧ソ連時代の手口が復活か
多くの記者が知らずに協力
ピース・データの「スタッフ」は通常、ウォルターズさんなどの記者に、ツイッターのダイレクトメッセージかビジネス特化型ソーシャルネットワークのリンクトインを通じて接触する。報酬は記事1本当たり100ドルから250ドルで、インターネット送金で即座に振り込まれる。
ロイターが取材した記者は全員、ピース・データの背後にロシアがいることを1日時点まで知らなかったと答えた。
一部の記者は、コロナ禍中に簡単に金を稼げる仕事だと思った、と話した。この仕事を業界でのチャンスと見た記者志望者もいた。うち1人は5月に出た記事について「自分の記事が独立系ニュースメディアに掲載されたのはこれが初めてだった」と語る。
ピース・データ側から政治面で明白な指示を受けなかった記者がいる一方、編集方針を不快に感じた者もいる。
ウィキリークスの創始者ジュリアン・アサンジ氏やトルコについての記事をピース・データに執筆した記者は「私の記事に大げさな政治的切り口を入れられた」と説明。「政治テーマについて特定の視点からフォーカスを絞るよう繰り返し求められたため、みるみるうちに、ニュース記事とは言えない代物になった」と話した。
ジョンズ・ホプキンス大のトーマス・リド教授によると、偽組織を使い、人々を無意識のうちにプロパガンダのエージェントや活動家に仕立てる手法は、旧ソ連時代にさかのぼる。
16年以降、オンラインで影響力を強化する取り組みが増えるにつれ、「正体を隠し続ける」ために旧来の手口に先祖返りしたようだとリド氏は言う。
「誰でもだまされかねない」
フリー記者のウォルターズさんは自身の経験を振り返り、オンラインで人々をだます手口を市民に周知することの重要性が示されたと話す。
「ここまで(手口が)洗練を極め、ここまで力を注いでいるのは、彼らがそれだけの価値があって成果が出ると考えているからに違いない」とウォルターズさん。
「私がだまされるなら、だれでもだまされ得ると思う。ただ私自身、こんなに興味深い体験は今後相当遠い先までできないだろう」
(Jack Stubbs記者)
【話題の記事】
・ロシア開発のコロナワクチン「スプートニクV」、ウイルスの有害な変異促す危険性
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず
9月15日号(9月8日発売)は「米大統領選2020:トランプの勝算 バイデンの誤算」特集。勝敗を分けるポイントは何か。コロナ、BLM、浮動票......でトランプの再選確率を探る。