共和党大会はトランプの危うい政治ショー 稀代のナルシシストが再選されたとき何が起こるのか
Farcical Show with Frightening Implications
長男のドナルド・トランプJr.は、NAFTA(北米自由貿易協定)は「悪夢」で「史上最悪の貿易協定」の1つだったと非難した。しかし、彼の父親が決めた新しい協定も、それほど代わり映えはしない。
次男のエリック・トランプも兄に負けじと、大統領が「守った」「約束」の1つに中東和平を挙げた。しかし、イスラエルとアラブ首長国連邦の国交正常化を考慮に入れても、拡大解釈に思える。
もっとも、こうした誇張は想定の範囲内だ。注目すべき外交政策のメッセージは、大半の演説者が触れようとしなかった部分にある。
その最たるものが、気候変動の脅威に関する議論だ。党大会の最中も、カリフォルニア州で史上最悪の山火事が続き、過去15年間で最大規模のハリケーンがメキシコ湾岸に上陸した。緊急に対策を取らなければ頻繁に壊滅的な被害を受けるという前触れだと、科学者は警鐘を鳴らす。
しかし、党大会でこの問題が注目されることはなかった。トランプは、新型コロナウイルスは「奇跡のように」消えるだろうと繰り返してきた。コロナより潜在的な脅威になりかねない気候変動についても、最善の対策は話題にしないことだと言わんばかりだ。
さらに、かつての共和党は民主主義や人権を踏みにじる国があれば、深い遺憾の意を表明したものだが、この大会では誰もそれに触れなかった。無理もない。過去4年間トランプ政権それ自体に、身内びいきや腐敗、民主主義のルール違反がはびこってきたのだ。
共和党大会が行われていたまさにその時期に、毒を盛られたロシアの反体制派の指導者が、ドイツの病院に搬送され治療を受けていた。ベラルーシではロシアの後ろ盾を得た大統領が平和的なデモを武力で鎮圧する構えを見せ、中国では何百万人ものウイグル人が強制収容されていた。
にもかかわらず、次から次へと演壇に立った演説者はトランプを「自由の守り手」としてたたえるばかりで、こうした「不都合な真実」には一切触れなかった。
そればかりか党大会の運営そのものが「民主主義の規範とルールなど無視していい」というメッセージになっていた。例えばトランプの親族がメインスピーカーの半数近くを占めたこと。また、現職の国務長官が党大会で演説を行うのは異例のことで、国務省の規定に反するとみる向きもあるが、ポンペオは演壇に立って堂々とトランプの外交政策をたたえた。こんなありさまではとても他国の抑圧体制など批判できない。
この大会で語られなかったことがもう1つある。アメリカの利益を守るためにも同盟関係や多国間の枠組みは極めて重要であるという事実だ。
党大会では逆に、多国間の枠組みは批判と侮蔑の対象となった。演壇に立ったニッキー・ヘイリー前国連大使は国連を「独裁者と虐殺者と泥棒がアメリカを非難する場」と呼んだ。
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