ケネディ対ニクソンから60年 アメリカ大統領選討論会の軌跡
共和党の現職ドナルド・トランプ大統領(右)と民主党のジョー・バイデン候補(左)は大統領選に向け、テレビでの討論番組で対決する。バイデン氏の写真はデラウェア州ウィルミントンで、トランプ氏の写真はホワイトハウスで4日撮影(2020年 ロイター/Kevin Lamarque/Leah Millis)
共和党の現職ドナルド・トランプ大統領と民主党のジョー・バイデン候補は、29日、大統領選に向け、テレビでの討論番組で対決する。テレビ討論は、現代の米国政治史において最も記憶に残る瞬間に彩られた、60年に及ぶ伝統である。
1960年 ケネディ vs ニクソン
民主党が指名したジョン・F・ケネディ候補と共和党のリチャード・ニクソン副大統領のあいだで、初のテレビ討論が行われた。ニクソン氏は病院から戻ったばかりで、テレビ出演用のメイクも拒んだことから無精髭が目立った。7000万人の視聴者は、両候補の言葉よりも見た目に注意を惹かれた。ケネディ候補が当選した。
1976年 カーター vs フォード
16年ぶりにテレビ討論が行われ、民主党のジミー・カーター候補が、選挙を経ずに副大統領から昇格した共和党のジェラルド・フォード大統領と対決した。フォード氏の「東欧はソ連の支配下にはなく、フォード政権が続く限り、将来もそうならないだろう」という言葉は重大な失言と見なされた。カーター候補が当選した。
1980年 レーガン vs カーター
カーター大統領は、独立系のジョン・アンダーソン候補も参加した初回のテレビ討論をボイコットした後、2回目の討論に共和党のロナルド・レーガン候補と共に出演した。カーター大統領は、高齢者対象の医療保険「メディケア」の削減を計画しているとしてレーガン候補を批判した。レーガン候補は、かねてからカーター氏が多くの問題について対立候補の立場を歪めて伝えていると批判していたが、「ほら、またやっている」と苦笑してみせた。この言葉が視聴者の笑いを誘い、その後のキャッチフレーズになった。レーガン候補が当選した。
1984年 レーガン vs モンデール
民主党が指名した56歳のウォルター・モンデール候補に対し、73歳のレーガン大統領は、次のような皮肉で自身の高齢という弱点をはぐらかした。「申し上げておきたいが、私はこの選挙戦において、年齢を問題視するつもりもない。政治的な目的で、対立候補の若さや経験不足につけ込もうとは思わない」 レーガン大統領は再選された。
1988年 ブッシュ vs デュカキス
共和党候補のジョージ・H・W・ブッシュ副大統領と民主党のマイケル・デュカキス候補との討論は、「あなたの妻を強姦し殺害した犯人の死刑を求めるか」という質問から始まった。批判派から「アイスマン」と揶揄されていたデュカキス候補にとって、この質問は人情味溢れる側面を示すチャンスだったが、生真面目な対応を見せたことで台無しになった。ブッシュ候補が当選した。
副大統領候補どうしの討論は、ブッシュ候補の相方であるダン・クエール候補が、自分の政治経験をジョン・F・ケネディと同程度だと述べたことで熱を帯びた。民主党のロイド・ベンツェン候補は静かに、淡々と言った。「上院議員、私はジャック・ケネディの同僚だった。彼を知っているし、私の友人だった。上院議員、あなたは断じてジャック・ケネディではない」
1992年 クリントン vs ブッシュ vs ペロー
このときは3人の候補者だった。ブッシュ大統領、民主党のビル・クリントン候補、独立系のロス・ペロー候補である。クリントン候補が当選した。
1996年 クリントン vs ドール
クリントン大統領との討論の際、共和党のボブ・ドール候補に対して、ある学生が「73歳という高齢では、若い人々が何を求めているか理解できないのではないか」と質問した。ドール候補は、自分の年齢になれば、知性と経験がもたらす叡智という優位がある、と答えた。するとクリントン候補は、こう反撃した。「ドール上院議員が大統領になるのに高齢すぎるとは思えない、ということだけは言える。しかし、私が問題にしたいのは、彼の理念の古さだ」 クリントン大統領は再選された。