イスラエル・UAE国交正常化が「究極のディール」の成果にしては貧弱な訳
トランプが合意の仲介人としての役割を自画自賛することは間違いない。既にロバート・オブライエン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は13日の記者会見で、トランプはいずれノーベル平和賞候補になるべきだと語った。
併合の棚上げは確かにイスラエル側の譲歩だ。だが併合問題が持ち出されたのは、トランプの支持を得られるかもしれないという臆測があったからこそ。娘婿のジャレッド・クシュナー上級顧問が立案した中東和平構想は、西岸地区でのパレスチナ人の主権を骨抜きにしようとしていた。
これもシリアや北朝鮮に対する外交姿勢に重なるものだ。トランプの言葉が危機を引き起こし、事態が現状維持の方向に落ち着くと、トランプはそれを自分の手柄にする。
余計な要素を全く考慮しなければ、今回の合意は意義ある前進だ。しかしトランプとクシュナーが中東和平で「究極のディール」を達成しようとした努力の対価としては、貧弱なものにしか見えない。
©2020 The Slate Group
<2020年8月25日号掲載>
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