最新記事

中東和平

イスラエル・UAE国交正常化が「究極のディール」の成果にしては貧弱な訳

2020年8月17日(月)19時15分
ジョシュア・キーティング

トランプが合意の仲介人としての役割を自画自賛することは間違いない。既にロバート・オブライエン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は13日の記者会見で、トランプはいずれノーベル平和賞候補になるべきだと語った。

併合の棚上げは確かにイスラエル側の譲歩だ。だが併合問題が持ち出されたのは、トランプの支持を得られるかもしれないという臆測があったからこそ。娘婿のジャレッド・クシュナー上級顧問が立案した中東和平構想は、西岸地区でのパレスチナ人の主権を骨抜きにしようとしていた。

これもシリアや北朝鮮に対する外交姿勢に重なるものだ。トランプの言葉が危機を引き起こし、事態が現状維持の方向に落ち着くと、トランプはそれを自分の手柄にする。

余計な要素を全く考慮しなければ、今回の合意は意義ある前進だ。しかしトランプとクシュナーが中東和平で「究極のディール」を達成しようとした努力の対価としては、貧弱なものにしか見えない。

©2020 The Slate Group

<2020年8月25日号掲載>

【関連記事】イスラエルの「ヨルダン川西岸併合」は当然の権利か、危険すぎる暴挙か【対論】
【関連記事】【レバノン大爆発】日頃の戦争を上回る最大の悲劇に団結する中東諸国

【話題の記事】
12歳の少年が6歳の妹をレイプ「ゲームと同じにしたかった」
コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず
異例の熱波と水不足が続くインドで、女性が水を飲まない理由が悲しすぎる
介護施設で寝たきりの女性を妊娠させた看護師の男を逮捕

20200825issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年8月25日号(8月18日発売)は「コロナストレス 長期化への処方箋」特集。仕事・育児・学習・睡眠......。コロナ禍の長期化で拡大するメンタルヘルス危機。世界と日本の処方箋は? 日本独自のコロナ鬱も取り上げる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

メキシコ第4四半期GDPは前期比0.6%減、3年ぶ

ワールド

米で特定の患者モニター機器に不正アクセスの恐れ、当

ワールド

トランプ政権国境責任者、カナダ高官と31日会談 関

ワールド

米下院、議会事務局のディープシーク使用認めず=アク
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 10
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中