最新記事

スパイ

中国によるスパイ活動と盗用行為が「アメリカの最大の脅威」

China Poses Unprecedented Security Risk to US Far Beyond Elections

2020年8月28日(金)23時57分
ナビード・ジャマリ、トム・オコナー

ロシアも厚かましいが巧妙さと長期的な展望においては中国に叶わない Sven Loeffler/iStock

<大統領選への介入疑惑があったロシアと比べても中国のスパイ能力は「別格」だと防諜当局者たちが証言>

アメリカの当局者たちは本誌に対して、中国こそがアメリカのスパイ対策上の最大のリスクだと指摘し続けてきた。前例のないその脅威は、企業や団体の専用回線網への大規模な侵入など、大統領選挙への介入をもはるかに超えるレベルに達していると。

FBIは本誌に宛てたコメントで、「中国ほど、アメリカの思想や技術革新、経済の安定に対して幅広い、包括的な脅威をもたらしている国はない」と指摘した。「さまざまな形でもたらされているその脅威は、FBIの防諜活動における最優先事項だ」

米国家情報長官室も同様の分析をしており、本誌への回答でこう述べた。「中国は長年、防諜コミュニティーが最も注目する存在であり続けている」

アメリカでは、ロシア政府が2016年の大統領選挙の結果に影響を及ぼそうと画策したことの衝撃が今も消えておらず、2020年の大統領選挙が本格化するなか、外国勢力による違法な選挙介入の兆候がないか目を光らせ、警戒を強めている。だが諜報コミュニティーにとって、国際舞台でアメリカの最大の戦略的ライバルと見なされつつある中国の脅威は別格で、彼らは中国について、これまで以上に注意すべきだと警鐘を鳴らしている。

標的は民間企業の監視下にある情報や技術

FBIのクリストファー・レイ長官は7月、FBIが「約10時間ごとに、中国関連の新たな防諜活動を開始している」ことを明らかにした。2月には、FBIが捜査中の(中国による)スパイ疑惑が約1000件にものぼっていると語った。

中国は「政府の総力」を挙げ、大規模なスパイ活動をしてきているとFBIは本誌に述べた。さまざまな技術を駆使してあらゆる形の情報を入手し、中国共産党の目標を前進させることがその目的だ。

「中国は国家安全保障上の優先課題を後押しするために、サイバースパイ活動を利用し続けており、アメリカや同盟諸国の政府、米企業などをその標的にしている」とFBIは主張した。「アメリカの民間産業を標的としたサイバースパイ活動で最も顕著なのは、防衛関連企業や、世界中の民間部門ネットワークを支えているIT・通信会社を標的としたものだ」

民間部門のネットワークには多国籍企業や研究機関、学術機関も含まれており、こうした組織は政府のセキュリティで守られていない。

「防諜とは、つまり窃盗を防ぐことだ」と、かつてFBI防諜部門の責任者を務めたスコット・オルソンは本誌に語った。「重要なもの全てを政府が管理しているならば、窃盗を防ぐのはとても簡単だ。だが今は、政府が全てを管理している訳ではない。重要なものが、民間企業の監視下にある」

<参考記事>FBI:中国は米大学にスパイを送り込んでいる
<参考記事>アメリカの産業スパイ事件、9割に中国が関与

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ住民の50%超が不公平な和平を懸念=世論

ワールド

北朝鮮、日米のミサイル共同生産合意を批判 「安保リ

ビジネス

相互関税「即時発効」と米政権、トランプ氏が2日発表

ビジネス

EQT、日本の不動産部門責任者にKKR幹部を任命
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中