最新記事

スパイ

中国によるスパイ活動と盗用行為が「アメリカの最大の脅威」

China Poses Unprecedented Security Risk to US Far Beyond Elections

2020年8月28日(金)23時57分
ナビード・ジャマリ、トム・オコナー

中国では、重要産業の多くに政府が関与しており、国にとってきわめて重要な情報は、国の支援の下で守られるようになっている。政府は諸外国のデータベースの一括管理も行っており、年々ハイテク化が進む世界最大の軍である人民解放軍のツールを利用することもある。

「中国は2015年以降、軍によるサイバー攻撃とスパイ要員を統合することで、サイバー攻撃能力を強化している」とFBIは本誌に語った。

中国の習近平国家出席は2015年、人民解放軍の大規模な再編を命令。これにはサイバー攻撃などを担当する戦略支援部隊の創設も含まれた。FBI防諜部門の元アシスタント・ディレクターであるフランク・フィグリッツィは本誌に、人民解放軍は全大隊を動員してデータ収集を行ってきた(大隊は最大1000人の兵士が所属する複数の中隊によって構成されている)と語った。

フィグリッツィは、2020年大統領選を外国勢力による干渉から守る上でFBIが重点を置いているのはロシアだが、その理由は中国の能力が不十分だからではないと指摘。ロシア政府と中国政府では目指すところが違うからであり、一部の政治評論家は両者を「誤った方法で対等に扱っている」と述べた。

支配したい中国、ぶち壊したいロシア

「もしも中国が本気でアメリカの選挙に干渉しようと決意すれば、ロシアとは別格の脅威になる。投入できる資源の量が違うからだ」とフィグリッツィは言い、ロシアは「厚かましい、積極的なアプローチ」を追求したが、「巧妙さと長期的な展望においては中国が上手だ」と語った。

FBIにとって、ロシアと中国はそれぞれ異なる目標を持つ敵だ。

「中国はアメリカを支配したいと考え、ロシアはアメリカをぶち壊したいと考えているのが、一つの違いだ」とフィグリッツィは指摘した。「そして中国は長期的な視野の下に資源や資金を投じ、計画を立てているのに対して、ロシアはチャンスさえあればいつでも奇襲攻撃を仕掛けて、私たちを痛めつけようと狙っている」

諜報当局のある幹部(匿名)は、ロシア政府の脅威の規模について、「多くの議員が『中国の脅威』に注目しているが、ロシア政府の触手は西洋社会のさまざまな側面に入り込んでいる」と語った。「ロシアは優れた偽情報キャンペーンを介して、情報戦争に勝利しつつある」

しかし中国にとって米政府との対峙とは、まず第一にアメリカのグローバル覇権に挑戦することを意味する。

<参考記事>FBI:中国は米大学にスパイを送り込んでいる
<参考記事>アメリカの産業スパイ事件、9割に中国が関与

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国軍が台湾周辺で実弾射撃訓練、封鎖想定 過去最大

ビジネス

中国、来年の消費財下取りに89億ドル割り当て スマ

ワールド

カンボジアとの停戦維持、合意違反でタイは兵士解放を

ワールド

韓国大統領、1月4ー7日に訪中 習主席とサプライチ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 6
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 7
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中