最新記事

感染症対策

新型コロナ対策、「わかってきたこと」と今後の見通し 公衆衛生の専門家、和田教授に学ぶ「冬への備え」

2020年8月29日(土)15時15分
和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授・医学系大学院教授) *東洋経済オンラインからの転載

日本でも今後、新型コロナ対策なんてしたくないという人が増えてくれば、感染者が増える可能性もあります。最近徐々に、日本でも「コロナは単なる風邪だ」といった楽観論が出ているようです。

「対策は不要だ」「新型コロナは単なる風邪だ」といった考え方から、感染拡大を抑える行動をやめる人が多くなると、感染拡大のスピードは速くなるでしょう。欧米などでは、マスクをするかしないかで政治論争にまでなっていますが、そんな状況を考えると、日本でも感染者は増加するのはやむをえないでしょう。

通勤電車に乗った後は必ず手を洗う、仕事の際もできるだけ対面での会話を避ける、ランチは1人で行く、少人数で行った場合も離れて席に着く、外出から戻ってきたら必ず手を洗う、そして電車に乗って帰宅したらやはり必ず手を洗う、といった基本的な感染対策をしていれば、感染リスクは低く抑えられると思います。

やみくもなPCR検査では非効率

濃厚接触者の調査で徐々にわかってきたことがあります。

家族に感染者がいる場合、日常生活は濃密な接触ですから、当然、家族内での感染の可能性は高まります。また、接待を伴う飲食店やスポーツ選手の寮ではかなり高い割合で陽性者が発生しました。

しかし、いわゆる「ローラー作戦」的に感染者が接したであろう人を対象にPCR検査をしても、思ったほど陽性者が見つからないということも報告されています。感染のリンクが自然に断ち切れていることも多いと考えられます。保健所の現場からも、「この人は陽性の可能性が高いだろうという人が陰性だというケースが案外多い」ということも聞かれます。感染者のウイルス量やどの程度の濃厚接触だったかにもよるとは思われますが、やみくもなローラー作戦よりは、濃厚接触者であっても戦略をもって対象者を吟味して検査を展開することが今後は必要です。

一般的には、行動が活発で、いろいろな場所に行き、さらに話をするのが好きという方は感染リスクが高くなるようです。加えて、濃密な接触があり、しかも多数の人が集まるような場所での感染リスクは、さらに高くなります。

例としては接待を伴う飲食店があげられます。そうした場所では店員さん同士が感染し、さらにお客さんへと感染することにより、いったん広がり始めると、毎日のように感染者が早い速度で増幅されます。そうした場所は、店員さんが感染しているので営業自粛などを一定期間していただくなどしないと感染のリンクが切れません。一部の大規模な繁華街には自粛要請がこれまでも出されましたが、今後も感染者の増加により自粛要請が必要になると考えられます。サービスや事業のあり方を考えなければならないともいえます。

居酒屋などの接待を伴わない飲食店の場合、店員さんから感染するというよりは、客の中に感染者がいて、客同士で広がっていきます。そういったお店は感染拡大する場ではありますが、接待を伴うような店とは異なり、たまたまその店で感染したということです。ただ、複数で飲食をする際に、仲間内の誰かが感染していたら、同席している方に感染するリスクは比較的高いのは間違いありません。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

脅迫で判事を警察保護下に、ルペン氏有罪裁判 大統領

ビジネス

貿易分断で世界成長抑制とインフレ高進の恐れ=シュナ

ビジネス

テスラの中国生産車、3月販売は前年比11.5%減 

ビジネス

訂正(発表者側の申し出)-ユニクロ、3月国内既存店
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中