最新記事

海を覆った軽石の島──オーストラリアに漂着しはじめている

2020年8月27日(木)17時00分
松岡由希子

大量の軽石が「浮島」となって海を漂う......  YShannon Lenz-ouTube

<ニューヨーク・マンハッタン島の2倍に相当する軽石が、昨年南太平洋で見つかったが、オーストラリアに漂着しはじめている......>

ニューヨーク・マンハッタン島の2倍に相当する軽石でできた巨大な浮遊物が、2019年8月16日、南太平洋で見つかった。

「軽石は、海洋生物にとって家であり、乗り物だ」

トンガのヴァヴァウ諸島近くの海底火山の噴火によって生成されたもので、ビー玉からバスケットボールくらいのサイズの大量の軽石で構成されている。この巨大な「軽石の浮島」はオーストラリアに向かって漂流を続け、2020年4月以降、北東部クイーンズランド州タウンズビルからニューサウスウェールズ州の海岸に、漂着しはじめている。

Sailing through Pumice near VaVau


軽石は、マグマが急に冷えて形成された軽量で多孔な火山岩である。海を漂っているうちに、その空洞には藻類やフジツボ、サンゴなど、様々な海洋生物が住み着きはじめる。「軽石の浮島」を専門に研究する豪クイーンズ工科大学(QUT)のスコット・ブライアン准教授は「ひとつひとつの軽石に小さなコミュニティが形成され、海を超えて運ばれる。この巨大な『軽石の浮島』には、このようなコミュニティが無数に存在している」と解説する。つまり、軽石は、海洋生物にとって家であり、乗り物だ。

グレートバリアリーフの再生にも寄与する?

「軽石の浮島」によって、無数の多様な海洋生物がわずか数ヶ月で何千キロメートルにもわたって運ばれる。ブライアン准教授はクイーンズランド州南東部のビーチに漂着した軽石を採取し、付着した生物を調べたところ、100種以上の生物が確認された。

Pumice arrives bringing boost of life


オーストラリア北東岸に広がる世界最大のサンゴ礁地帯グレートバリアリーフは地球温暖化の影響を受けており、2016年の熱波では大量に死滅した。この巨大な「軽石の浮島」のオーストラリアへの漂着は、グレートバリアリーフの再生にも寄与するのではないかと期待が寄せられている。

ブライアン准教授は「『軽石の浮島』そのものが、グレートバリアリーフへの気候変動の影響を軽減できるのではなく、5年周期で起こるサンゴやその他の生物の増加に寄与する。いわば、『軽石の浮島』はグレートバリアリーフへの『ビタミン剤』のようなものだ」と述べている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    注目を集めた「ロサンゼルス山火事」映像...空に広が…
  • 10
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中