最新記事

米人種問題

米ウィスコンシン州のデモ隊銃撃でトランプが米軍を召集

Trump Sending Federal Troops to ‘Restore Law and Order’

2020年8月27日(木)15時30分
メーガン・ルース

警官が黒人男性に発砲した事件をきっかけに毎晩デモが吹き荒れ、厳戒態勢が敷かれるケノーシャ Brendan McDermid-REUTERS

<知事が非暴力を訴えても騒乱はやまず、ついに自警団がデモ参加者に発砲して死なせる事態に>

ドナルド・トランプ米大統領は8月26日、ウィスコンシン州ケノーシャに連邦軍を派遣する用意があるとツイートした。ケノーシャでは警官が黒人男性に発砲した事件をきっかけに、毎晩抗議デモが行われている上、25日深夜から26日未明にかけてはデモ参加者を狙った銃撃事件が発生し、2人が死亡した。撃ったのは、「自警団」と称する武装した住民だ。

銃撃の場面


「アメリカの街で略奪、放火、暴力が起き、無法状態になることを、われわれは許さない」と、トランプはツイート。ウィスコンシン州のトニー・エバーズ知事もホワイトハウスのスタッフとの電話協議で連邦軍の受け入れに同意した、と付け加えた。

「今日、連邦の治安要員と州兵をウィスコンシン州ケノーシャに派遣し、法と秩序を回復させる」と、トランプは次のツイートで宣言した。

ホワイトハウスは26日、トランプはすでに1000人近い州兵と、約200人の連邦治安要員を召集したと発表した。

州当局の発表によると、エバーズは8月26日夜に地元警察を支援するため州兵500人の出動を認めたという。「知事は州兵と州警察による支援体制を増強するため、引き続き他州と調整を進めている」と、州当局は述べている。

知事は警官の暴力を非難

ケノーシャで抗議デモが始まったのは23日夜。29歳の黒人男性ジェイコブ・ブレークが背後から警官に撃たれる動画がソーシャルメディアに出回ったことがきっかけだった。ブレークの弁護を担当することになった弁護士のベン・クランプによると、ブレークは3人の息子の目の前で、背中に何発もの銃弾をくらった。一命は取りとめたが、深刻な障害を負う懸念がある。

デモは23日から毎晩行われ、ケノーシャは騒然とした雰囲気に包まれている。26日午前0時を回った頃、デモが行われている地区で銃撃が起き、2人が死亡、1人が重傷を負った。その日のうちに容疑者の17歳の少年が逮捕され、今週中にも起訴に向けた手続きが始まる見込みだ。

容疑者とみられる少年。事件前、「人々を守るために銃を取った」とカメラマンに語った


エバーズ知事はブレークが撃たれた事件後、即座に声明を発表。「州や国の法執行機関の要員に撃たれたり、傷つけられたり、無慈悲にも殺された黒人、あるいは個人は(ブレークが)初めてではない」と遺憾の意を表明した。

知事はその後も市民には抗議する権利があると繰り返し述べると共に、平和的なデモを行うよう参加者に呼びかけている。

25日には知事は前日夜の騒乱で、「個人、家族、事業が危険にさらされた」とツイートし、非常事態を宣言した。

<参考記事>トランプの着々と進む「戦争」準備、ワシントン一帯に兵を配備
<参考記事>トランプが国民に銃を向ければアメリカは終わる

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザの学校に空爆、火災で避難民が犠牲 小児病院にミ

ワールド

ウクライナ和平交渉、参加国の隔たり縮める必要=ロシ

ビジネス

英総合PMI、4月速報48.2 貿易戦争で50割れ

ビジネス

円債は償還多く残高減も「買い目線」、長期・超長期債
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 2
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 3
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 4
    パウエルFRB議長解任までやったとしてもトランプの「…
  • 5
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 6
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 7
    なぜ世界中の人が「日本アニメ」にハマるのか?...鬼…
  • 8
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 9
    日本の人口減少「衝撃の実態」...データは何を語る?
  • 10
    コロナ「武漢研究所説」強調する米政府の新サイト立…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 7
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 8
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中