「ルカシェンコ後」のベラルーシを待つ危険過ぎる権力の空白
A Hard and Fast Fall
この1週間余りで話を聞いた人の大半が、自分たちの勝利を確信していた。そして、ニキータのような人たちが拷問の傷痕も生々しく釈放され始めると、人々は決意を固めた。6700人以上が逮捕された。行方が分からない人もいる。ルカシェンコは退陣するしかなさそうだ。
ただし、油断はできない。今から約6年前、筆者はウクライナの首都キエフの独立広場で起きた抗議活動の余波を取材した。親モスクワ派の指導者を退陣させた国に、ロシアが軍隊を投入する様をこの目で見た。
クレムリンは裏庭の警戒を怠らない。ロシア連邦には数多くの共和国があり、それぞれが分離主義者の野望を抱えている。キエフの次はミンスクか? チェチェンか? ダゲスタンか?
もっとも、ベラルーシとウクライナは事情が異なる。ウクライナでは、モスクワが代理政党や役人、経済界、メディアに勢力を築いていた。
ウラジーミル・プーチン大統領がウクライナ南部のクリミア半島を併合して東部に進出した際は、親ロシア派のネットワークを頼りにできた。さらに、ウクライナ、特にクリミアを分断している民族対立も利用できたが、そのような要素はベラルーシにはない。
ベラルーシの反体制活動家フラナク・ビアチョルカは、ロシアの侵攻はいかなる形でも、多くの抵抗を招くだろうと語る。「ロシアの完全な支配を支持する人はいない。ルカシェンコもそれを理解していて、ロシアによる統合のプロセスを遅らせてきた」
とはいえ、状況は依然として緊迫している。チハノフスカヤは治安部隊から圧力を受けて隣国リトアニアに逃れたが、少なくとも言葉では、革命の機運を率いている。
危険過ぎる政治的停滞
ルカシェンコが現実に失脚しつつあるとしたら、権力の空白が生まれようとしている。その空白を反体制派が掌握できなければ、ロシアに奪われるか(軍事侵攻抜きの政治的な影響力だけでも、十分に可能だ)、ベラルーシの暴力的なエリート層、おそらく治安部隊が制するだろう。
チハノフスカヤには勢いがあるが、彼女は政治家ではない。自分は暫定的な指導者として、新たに行う公正な選挙を監督するだけだと明言しており、現在は国外にいる。
ここに危険な政治的停滞が生まれつつある。それを解決するには、抗議活動が新たな選挙を実現させるか、ロシアが介入するしかないだろう。
「この状況が何週間、何カ月と続く可能性がある」とビアチョルカは言う。「時間がたつほど、ロシアが支配権を奪いやすくなって、誰も望んでいない状況になる」
<2020年9月1日号掲載>
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