最新記事

エンターテインメント

コメディーの達人ジャド・アパトーが撮った、自分史上最も正直な物語

Fiction at Its Most Honest

2020年8月22日(土)15時30分
H・アラン・スコット

ILLUSTRATION BY BRITT SPENCER

<心に傷を負ったコメディー俳優の半自伝的映画が話題のアパトー監督に聞く>

ジャド・アパトー(52)は『40歳の童貞男』や『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』など爆笑コメディーの監督として知られるが、真面目な作品もうまい。全米で配信中の『ザ・キング・オブ・スタテンアイランド』も、そんな才能が光る一本だ。

基になったのは、自殺騒動やリハビリ施設への入所などスキャンダルも多いコメディアン、ピート・デビッドソンの半生。自堕落な若者が幼い頃に亡くした父の死に向き合おうとする姿を描く(デビッドソンの父は消防士で、9.11同時多発テロで殉職した)。

「全てのせりふで笑いを取ろうとしなかったのは初めてだった」と、アパトー。「これまで作った中で最も正直な部類に入る映画」とも言うが、それはこの半自伝的映画で主演するデビッドソンの演技に負うところも大きい。

アパトーに言わせれば「たくさんのディープな対話」から生まれたデビッドソンの演技は、驚くほど悲哀に満ちて......でも、やっぱり笑わせる。本誌H・アラン・スコットがアパトーに話を聞いた。

* * *


――この作品で観客が一番驚いたのは何だと思う?

ピートは心の広い素敵な奴だが、問題を抱えている。コメディーをやってきたのも、心の傷から自分を守るため。シニカルな笑いは痛みを表現する手段なんだ。でも彼が具体的に何に苦しんでいるのか、それを知る人は少ない。ピートにとってこの映画は、内面を見せる場になった。あそこまで弱い自分をさらけ出すなんて、本当に勇気がある。

――この映画を撮りたいと思った理由は?

何よりピートという相棒を得たことにわくわくした。『エイミー、エイミー、エイミー! こじらせシングルライフの抜け出し方』(2015年)の出演者を検討していて、主演のエイミー・シューマーに誰が面白いと思うかって聞いたんだ。彼女が真っ先に挙げたのがピートだった。

だからピートにちょい役で出てもらった。ブレイクしそうな役者に出演してもらうのは楽しい。端役でも、「あいつはビッグになるって知ってたよ」と後で威張れるものね。

その後、何か一緒にやろうとピートと話し合いを重ねるうちに、彼の身の上と気持ちを聞いた。この映画はフィクションなのだけれど、真実にもあふれている。

<関連記事:どの俳優も共演者を6人たどればケビン・ベーコンに行き着く!?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米プリンストン大への政府助成金停止、反ユダヤ主義調

ワールド

イスラエルがガザ軍事作戦を大幅に拡大、広範囲制圧へ

ワールド

中国軍、東シナ海で実弾射撃訓練 台湾周辺の演習エス

ワールド

今年のドイツ成長率予想0.2%に下方修正、回復は緩
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中