中国はなぜ尖閣での漁を禁止したのか
2010年の尖閣周辺における中国漁船接触事件で中国各地で起きた反日デモ Aly Song-REUTERS
中国の禁漁期間が明けたが、地元当局は「敏感海域」への接近を禁じた。実は禁止令は数年前から出されており、「敏感海域」には台湾が含まれている。今年は特に台湾海峡を巡る米中両軍のつばぜり合いが無視できない。
「敏感な海域」での漁を禁じた地元当局
中国政府が東シナ海周辺に設定していた3ヵ月間の禁漁期間(5月1日12時~8月16日12時)は、8月16日正午12時(中国時間)に解禁となった。しかし地元当局は解禁に当たり、「敏感な海域」に行ってはならないという指示を出した。
地元当局というのは主に福建省のさまざまなレベルの行政区画の政府であることが多く、浙江省や時には広東省が入ることもある。
また「敏感海域」というのは「政治的にデリケートで問題を起こしやすい海域」という意味で、日本の尖閣諸島(中国大陸では釣魚島)だけを指しているわけではなく、台湾海峡を指している場合もある。
今般、漁民らが日本メディアの取材に対して「釣魚島周辺30海里(約56キロメートル)以内に入ってはならないと当局から言われている」と言ったと報道されていることもあり、日本としては自ずと尖閣諸島に焦点が当たる。
周辺漁民の教育レベルは必ずしも高いわけではないので、いつも地元当局による「敏感海域に行って漁労することを厳禁する」という横断幕が掲げられているのが特徴だ。
今年の「敏感海域」に関する中国国内あるいは世界の中文における報道は、ほとんどが日本のメディアからの引用で、こちらも日本の読売新聞の報道を引用している。
敏感海域での漁労禁止令は2017以前から
実は禁漁解禁時に「敏感海域に行って漁労してはならない」という禁止令は、そう明確な形ではないにせよ2013年にも見られる。たとえば2013年5月28日の福建省福州市にある連江県の地方紙「連江新聞」は台湾海峡という「敏感海域」で事件が発生しているので、そこには漁に出かけてはならないという指示を出している(オリジナルサイトにはアクセスできないので、リンク先はGoogleのキャッシュである)。
台湾海峡での揉め事が絶えなかったからだが、習近平政権になってからは馬英九政権との間での平和統一を狙っていたため、地元が動いたのだとみなしていい。
一般に中国では、禁漁期間は中国中央政府が発布するが、解禁後にどこで漁をして良いかいけないかに関しては、地方政府、それも非常に細かく分かれた行政区画レベルで禁止令が出されるので、それぞれの地域の情報を確認するしかない。