米貧困層は郵便投票の切手代がない!
Cost of Posting Mail-in Ballots Could Stop More People of Color Voting
郵送料金を誰が負担するかは、郵便投票の前に立ちはだかる大問題 Rachel Wisniewski‐REUTERS
<切手購入がむずかしい低所得の少数派の選挙権を奪えば格差の拡大再生産になると、権利団体は送料の無料化を要求している>
11月の大統領選に向けて郵便投票をめぐる議論が盛んだが、そこに新たな問題が持ち上がった。アメリカは世界最大の新型コロナウイルス感染国で、その勢いはまだ収まらない。「密」になりがちな投票所に出かけるのは危険なため、郵便投票が奨励されている。
だが、ドナルド・トランプ大統領は不正の温床だとして郵便投票に反対しているし、トランプが最近指名したばかりの郵政長官はトランプに有利な郵便「改革」を進めていると問題にもなった。しかし一部の人権団体は、それ以前に、アメリカの貧困層や非白人には切手を買うお金もない、と主張する。彼らは、有権者全員の切手代免除を求めている。郵送料が自己負担になると、多くのアメリカ人、特に非白人層が投票できなくなる恐れがあるからだ。
BVM(ブラック・ボーターズ・マター=黒人の投票も大切)運動や、民主党の政治活動委員会(スーパーPAC) の一つであるプライオリティUSAがいくつも訴訟を提起している。投票のために有権者が切手代を負担しなければならない仕組みは、アメリカ建国当初、投票権を得るために一定額以上の納税が必要とした人頭税と同じく、貧困層、とりわけ黒人を投票から締め出すものだという(人頭税は1964年に廃止された)。
カリフォルニア州、バージニア州、ウィスコンシン州など一部の州では郵便投票の送料を無料にしているが、ほとんどの州では、有権者が送料を払うことになっている。
BVM運動の共同創設者クリフ・オルブライトは本誌に、投票のために切手代を支払わなければならない制度は、有色人種の投票をかなり制限する要因になると語った。「55セントであれ2ドルであれ100ドルであれ、こうしたコストは人頭税のようなものだ」
切手を買いに行くのも困難
ジョージア州にあるアメリカ自由人権協会は今年初め、郵便での投票や投票用紙の請求にあたって有権者に送料を負担させることは選挙権を侵害し、憲法違反にあたると主張し、訴訟を起こした。
「多くの低所得の有権者は郵便切手を持っていない。もはや日常的に使っていないし、これからも必要になることはない」と、訴状は訴える。
「車を持たず、ライドシェアリングもできない人が多く、公共交通機関も存在しない農村部では、切手を買うだけでもたいへんだ。切手を買うために、わざわざ新型コロナウイルスに感染するリスクを負うことにもなる」
「インターネットにアクセスできない有権者やクレジットカードを持たない有権者は、オンラインで切手を購入することもできないし、たとえ買えるとしても、10枚セットなどのまとめ買いを求められて不必要な支出を強いられることになる」
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