最新記事

アメリカ政治

トランプ支持者の郵政長官が大統領選の郵便投票をサボタージュ?

USPS Union President Details Postmaster Policies to 'Slow Down Mail'

2020年8月18日(火)16時05分
エミリー・チャコール

大統領選の郵便投票は民主党に有利になるとみて、トランプは強硬に反対している Mario Anzuoni- REUTERS

<効率向上のため大幅な業務見直しを導入した郵政長官の改革計画は、クリスマスの繁忙期にも経験したことのないような業務停滞をもたらしている>

新型コロナウイルスの感染予防のため米大統領選で大幅に増加すると見込まれる郵便投票について、米郵政公社(USPS)は「配達が間に合わず大量の無効票が出る恐れがある」と警告している。公社総裁は郵便投票に反対するトランプ大統領の支持者だけに、批判も出ている。

大統領選の正当性に疑問を生じさせかねないこの問題で、米郵政公社の労働者を代表する米国郵便労働者組合(APWU)のマーク・ディモンドシュタイン代表は8月16日、郵便配達の遅れに拍車をかける連邦政府の方針について、現場の声を代弁する証言をした。

彼はCNNのインタビューの中で、配達の大幅な遅れを招いているのは、ルイス・デジョイ郵政長官によるUSPSの改革計画だと批判した。

「全米の郵便局員からは、新たに就任した郵政長官が導入した全ての方針──従業員の労働時間短縮、輸送方法の変更・削減、10分以内に配達トラックに積み込めなかった郵便物は翌日にまわすなど──が、配達の遅れを引き起こしているという声が上がっている」とディモンドシュタインは述べた。

APWUは郵便サービスで働く労働者を代表する米国内最大規模の組合のひとつで、退職者を含むUSPS職員20万人以上を代表している。ディモンドシュタインはCNNに対して、導入理由が政治的なものであれ経済的なものであれ、組合員たちはサービスの効率性向上のための一連の規制に「とても困惑している」と語った。

インタビューの中で彼は「こんな規制は、クリスマスの繁忙期でさえ一度も経験したことがない」と語り、こう続けた。「郵便局員たちは、郵便物の配達を送らせなければならない事態にとても困惑している」

トランプの意向を反映か

最近のUSPSの構造・運営改革には、議員や一般市民も警戒感を募らせている。11月の大統領選挙では、大勢の有権者が郵便投票を行うと予想されているからだ。

ドナルド・トランプ大統領は以前から、郵便投票の拡大は不正を招くと(証拠を示さずに)主張してきた。郵便投票が増えるとマイノリティーの票が増えて不利になると見ているためだ。さらに先週には政府による票の操作に対する懸念が高まった。トランプが13日のFOXビジネスのインタビューの中で、民主党が提案しているUSPSへの財政支援を支持しないのは、郵便投票に反対だからだと示唆したのだ。

こうしたなか、USPSの改革においてデジョイ郵政長官が果たした役割に注目が集まっている。議会民主党は16日、デジョイに対して、今後予定されている公聴会での証言を正式に要請した。公聴会ではUSPSの「大幅な」業務見直しと、それが郵便投票に及ぼす影響をどう考えていたか問い質す予定だ。

USPSのプレスリリースによれば、デジョイは8月7日の理事会で「我々は既存の業務計画をより忠実に守るために、幾つかの緊急措置を導入した。効率的かつ効果的な方法で、今あるサービス基準を確実に満たすためだ」と語り、さらにこう続けた。「業務を時間内に、スケジュールどおりに実行し、不必要な残業代などのコストが発生しないようにすることで、持続可能性を向上させ、質の高い、手頃な価格のサービスの提供を続けるための能力を強化していく考えだ」

<参考記事>米民主主義の危機 大統領選で敗北してもトランプは辞めない
<参考記事>トランプのツイッターで急浮上 米大統領選「悪夢のシナリオ」

【話題の記事】
【写真特集】ポルノ女優から受付嬢まで、トランプの性スキャンダルを告発した美女たち
トランプに「英語を話さない」と言われた昭恵夫人、米でヒーローに
傲慢な中国は世界の嫌われ者
「中国はアメリカに勝てない」ジョセフ・ナイ教授が警告

20200825issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年8月25日号(8月18日発売)は「コロナストレス 長期化への処方箋」特集。仕事・育児・学習・睡眠......。コロナ禍の長期化で拡大するメンタルヘルス危機。世界と日本の処方箋は? 日本独自のコロナ鬱も取り上げる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:トランプ関税「朝令暮改」、不確実性にウォ

ワールド

女性の権利侵害に反撃訴え、国連事務総長が国際女性デ

ワールド

ブラジル昨年のGDP3.4%増、3年ぶりの大幅成長

ビジネス

セブン&アイ、クシュタール提案「現実的に評価できる
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望的な瞬間、乗客が撮影していた映像が話題
  • 3
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手」を知ってネット爆笑
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 6
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 7
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 8
    鳥類の肺に高濃度のマイクロプラスチック検出...ヒト…
  • 9
    中国経済に大きな打撃...1-2月の輸出が大幅に減速 …
  • 10
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 6
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 7
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 10
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中