聖域「王室」にも迫る タブーに挑むタイ若者の民主活動
今月初めの2日間にわたるビデオ会議で、タイのカセサート大学・マハナコン大学に所属する10数名の学生たちは、投獄のリスクを冒してもタブーを破り、タイの強力な君主制に公然と異議を申し立てるべきか議論していた。写真は7月、マハ・ワチラロンコン国王のポートレートの横を通過する反政権デモの参加者(2020年 ロイター/Jorge Silva)
今月初めの2日間にわたるビデオ会議で、タイのカセサート大学・マハナコン大学に所属する10数名の学生たちは、投獄のリスクを冒してもタブーを破り、タイの強力な君主制に公然と異議を申し立てるべきか議論していた。ビデオ会議の参加者2人が明らかにした。
街頭、オンラインでの抗議行動参加者のあいだでは、ここ数ヶ月、民主主義の拡大を訴えるなかで、婉曲にマハ・ワチラロンコン国王に言及する例が増えていた。だが、公然と王制改革を訴える者はいなかった。
2人の参加者によれば、このビデオ会議で学生たちは、『ハリー・ポッター』シリーズの魔法使いをテーマにした抗議活動について協議した。J・K・ローリングの人気シリーズで主人公ハリーの宿敵を指す「名前を言ってはいけないあの人(He-Who-Must-Not-Be-Named)」と呼ぶだけで、公然たる対決の寸前で踏みとどまることも検討された。
だが、もっと明確な、そしてリスクの高い表現を求める主張が勝利を収めた。
8月3日月曜日の夜、人権派弁護士のアノン・ナンパ氏(35)、バンコクの民主記念塔脇に設けられた演壇に立ち、王室の権限縮小を求めた。タイ国内では極めて珍しい事件である。
彼は警察官の監視を受けつつ、200人ほどの抗議参加者に対し「民主主義国家で、軍に関してこれほど大きな権力を国王に認めている国はない」と語りかけた。「これによって、民主主義国家における君主制が絶対君主制に転じるリスクが増している」
タイはこの数十年間、政治の混乱に翻弄されてきたが、街頭デモの参加者が君主制の改革を求めることは過去には見られなかった。憲法では王室について「崇敬すべき存在」としての立場を保たなければならないと規定している。
2016年に没するまで70年にわたり君臨したワチラロンコン王の父、プミポン・アドゥンヤデート前国王の時代には、君主制に対する異議申立ては、いかなる形であれ、きわめて珍しかった。
アノン氏も他の抗議参加者も、タイの不敬罪法違反による告発は受けていない。この法律は、君主制に対する批判について最長で禁固15年の刑を定めている。
だが、8月7日金曜日、警察は7月18日に行われた別の抗議行動に関連してアノン氏を「社会不安及び不信の扇動」など複数の容疑で勾留していることを明らかにした。最長で7年の禁固刑となる可能性がある。
弁護士のウィーラナン・ファドスリ氏によれば、アノン氏はすべての容疑を否認しているという。同氏は8日に保釈された。
国防省のコンチープ・タントラワニット報道官は、「王室を対立に持ち込まないでほしい。不適切だ。王室はタイ国民の統合の中心だ」と話す。
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