米で増える「保育難民」 働くママにコロナ禍の試練
限られる選択肢
ここ数週間、各家庭が感じるプレッシャーは確実に強まっているように見える。追加的な失業給付や家賃未払い者への立ち退き猶予措置、教育ローン返済の凍結など、失業した親たちに救いの手を差し伸べる各種の支援プログラム・保護措置が期限切れを迎えているからだ。
シングルマザーとその子どもたちを支援するミネアポリスのNPO「ジェレミア・プログラム」のチャスティティ・ロード代表兼最高責任者は「母親たちの生活、そして米国経済全体がこうした(補助という)目に見えない細い糸でつながり、支えられている」と語る。
保育サービスへのアクセスを拡大する方法が見つかれば、パンデミックによる経済的荒廃から米国の労働市場が立ち直る動きを支える柱になるだろう。最新のデータでは、米国経済では2020年第2四半期に年換算で32.9%のマイナス成長とされており、7月11日までの1週間では、労働者の約5人に1人が失業保険給付を申請している。
新型コロナ禍によって数千カ所の保育施設が閉鎖される前から、保育サービスはすでに手薄だった。2018年の時点で、米国民の半数以上が「保育の砂漠」で暮らしていた。これはワシントンのリベラル系NPO「センター・フォー・アメリカン・プログレス」の定義で、認可保育サービスがまったくないか、5歳以下の子ども3人当たり1人以下の受け入れ枠しかない地域を指している。
現在では多くの州で、ウイルスの感染拡大を防ぐため、保育施設が限られた数の子どもしか受け入れなくなっている。祖父母など高齢の親族や隣人を頼りにしてきた家庭はさらに深刻だ。子どもの世話を頼めば、高齢者の死亡率が特に高いことが分かっている新型コロナに感染させかねないリスクを冒すことになりかねない。
シャンテル・スプリンガーさん(24歳)は、パンデミックの最初の数ヶ月、マンハッタンのスターバックスで働いていたが、勤務先の店舗が需要の減少とソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)の条件を満たすためにスタッフを削減したため、6月以来一時解雇の状態にある。失業給付が週325ドルまで減額される可能性があるため、スプリンガーさんはシフトマネジャーとしての仕事に復帰しようと調整中だ。
「働かなければ」とスプリンガーさんは言い、失業給付が減額されれば家賃や食費、オムツ代などをまかないきれないと説明する。
スプリンガーさんは今月、2歳の子どもを抱える自宅の近くで働けるよう、ブルックリンの店舗に異動した。だが、息子のベビーシッター探しが容易ではない。スプリンガーさんの母親は最近、新型コロナで夫を亡くした障害のある姉の介護をするために引っ越してしまった。
今のところスプリンガーさんは、やはり小売産業での仕事に復帰した息子の父親とのあいだで育児のスケジュールを調整しようとしている。
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