地球上で最も天体観測に適した場所が特定される──しかし、気温も......
天体観測に適しているが、地球上で最も低温だとみられている...... Credit: Zhaohui Shang
<カナダ・ブリテッシュコロンビア大学などの研究チームは、東南極で最も高い標高4093メートルの地点がもっとも大気のゆらぎが少なく、天体観測に適していると明らかにした......>
地球上で最も天体観測に適した場所はどこだろうか......。
東南極・南極高原のなだらかな氷床の円頂丘の頂上部「ドームA(ドームアーガス)」は、海岸から約1200キロメートル離れ、東南極で最も高い標高4093メートルの地点にある。また、このエリアは、気温マイナス90度にまで下がることがあり、地球上で最も低温だとみられている。
このほど、標高の高さや気温の低さ、暗闇が続く時間の長さ、非常に安定した大気というドームA特有の要因により、ドームAが世界で最も天体観測に適した場所であることが明らかとなった。
地上での天体観測では、大気のゆらぎによって天体からの光が屈折し、星像が揺れたり、ぼけたり、広がったりする。星がキラキラと輝くのは、大気のゆらぎによるものだ。
小型望遠鏡システムをドームAに設置して測定した
このような現象の程度を表わす尺度は「シーイング」と呼ばれる。平均標高約5000メートルのチリのアタカマ砂漠に設置されている「アルマ望遠鏡」など、中緯度地域で最高級の天文台のシーイングは、概ね0.6〜0.8秒角だ。
南極では大気のゆらぎが弱いためシーイングがより向上するのではないかと考えられており、東南極にある標高3240メートルの氷床の円頂丘「ドームC(ドームチャーリー)」のシーイングは0.23〜0.36秒角と推定されている。
カナダ・ブリテッシュコロンビア大学(UBC)、中国科学院国家天文台、豪ニューサウスウェールズ大学(UNSW)の共同研究チームは、「ドームAの上空の大気境界層(地表面との摩擦に影響を受ける地球の大気で最も低い部分)はドームCよりも薄い」との推定のもと、中国の研究チームが開発した小型望遠鏡システムをドームAに設置。8メートルの高さから夜間のシーイングを測定した。
星のまたたきが大幅に減り、はっきりと明るく観測できる
2020年7月29日に学術雑誌「ネイチャー」で発表した研究成果によると、そのシーイングは最低値で0.13秒角であった。この値はドームCで20メートルの高さから測定した値に匹敵し、中緯度地域で最高級とされる天文台よりもずっと低い。つまり、ドームAでは、星のまたたきが大幅に減り、星像がよりはっきりと明るく観測できるという。
研究論文の共同著者でニューサウスウェールズ大学の天文学者マイケル・アシュリー教授は、「間接的な証拠や論理的推論から、ドームAが天体観測に適した環境であると考えられてきたが、この研究成果によって、ようやく、直接かつ客観的な証拠を示すことができた」と述べている。