「禁断」のタイ王室批判で1976年の惨劇再び?
映画『ハンガー・ゲーム』シリーズの「3本指ポーズ」で抵抗の意思を表現 ATHIT PERAWONGMETHA-REUTERS
<かつて政治的動乱の最前線となったタイの大学で、学生活動家が王室批判を展開>
今年に入りタイ全土で反政府デモが続くなか、一部の学生活動家たちの行動に注目が集まっている。最近、タマサート大学ランシット・キャンパスで行われた抗議活動で、王室を直接的に批判したためだ。タイでは、王室批判はタブー中のタブーとされてきた。
タマサート大学がタイの政治的動乱の最前線になるのはこれが初めてではない。1976年に同大学で起きた出来事の暗い記憶は、不吉な黒い雲のように活動家たちの頭上に垂れ込めている。
今年の反政府デモは、2月に憲法裁判所が野党・新未来党の解党を命じたことを発端に始まった。その後、新型コロナウイルスの感染予防策として大規模集会が禁止されたことで、抗議活動はすぐに沈静化したかに思えた。
しかし、6月初めに有力な民主活動家のワンチャルーム・ササクシットが失踪したことで、抗議活動は再び勢いを増し始めた。カンボジアのプノンペンで亡命生活を送っていたワンチャルームは6月4日、自宅近くで武装した男たちに拉致された。それ以来、消息は分かっていない。
7月18日には、首都バンコクの民主記念塔周辺に抗議の市民数千人が集結。2014年の軍事クーデター以降、権力を握り続けているプラユット首相の政権に抗議し、軍政下で制定された憲法の改正、活動家への処罰の中止、議会の解散を要求した。
その後、抗議活動は勢いを増していった。それでも、批判の矛先はあくまでもプラユット政権と、強大な政治的影響力を握り続けている軍に向けられていた。
状況が変わったのは8月10日夜。バンコクの北42キロにあるタマサート大学ランシット・キャンパスで行われた抗議集会で1人の学生が演説し、王室を公然と批判したのだ。学生が掲げた要求の中には、王室による公金使用の抑制などに加えて、不敬罪の廃止も含まれていた。
不敬罪は、国王や王族を中傷したり、侮辱したり、敵意の対象にしたりした人物に、最高で15年の禁錮刑を科す法律だ。この法律は、1976年にタマサート大学で起きた出来事を機に厳格化されたものだ。
1976年10月4日、バンコクの中心部に位置するタマサート大学タープラチャン・キャンパスで学生が演劇を上演した。その中に、若者たちが首をつるされる場面があった。これは、この少し前に2人の民主活動家がリンチを受けて絞殺されたことに抗議するものだった。
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