最新記事

中国

ポンペオ猛攻──同盟国に香港犯罪人引渡し条約の停止要求か

2020年7月24日(金)20時42分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

当時、これは「イギリス側の勝利」と受け止められていたので、コモンローを用いている国家は一斉に香港と喜んで「犯罪人引渡し条約」を結んだのだった。

逃亡犯条例改正案は香港国安法で「完成」されていた

ところが今般の香港国安法(香港国家安全維持法)制定により、事実上、昨年の抗議デモで廃案となった「逃亡犯条例改正案」は「完成」されてしまった。

国安法第14条には香港に「香港特別行政区国家安全維持委員会」を設置することと、その職責に関して書いてあるが、それによれば、「香港特別行政区国家安全維持委員会の業務は香港特別行政区の他のいかなる機構、組織及び個人の干渉も受けず、業務情報はこれを公開しない。香港特別行政区国家安全維持委員会が行った決定は司法審査を受けない」となっている。

また国安法第55条では「次の各号の一つに該当するときには、香港特別行政区政府または駐香港特別行政区国家安全維持公署が申し立て、かつ中央人民政府の承認を受けて、駐香港特別行政区国家安全維持公署がこの法律に定める、国家の安全を害する犯罪事案に対し管轄権を行使する」と規定してあり、かつ第56条では「第55条の規定に基づいて国家の安全を害する犯罪事案を管轄する際は、駐香港特別行政区国家安全維持公署が立件・捜査を担当し、最高人民検察院が関係検察機関を指定して検察権を行使し、最高人民法院が関係法院を指定して裁判権を行使する。」とある。

頭に入りやすい平易な言葉に言い換えると、昨年、あんなにまで激しく燃え上がって廃案にまで持ち込んだ逃亡犯条例改正案だったが、結局、「北京」(=中国政府=中国共産党)に対して抗議運動を引き起こしたり参加したりした香港人はみな「国家安全法」に抵触するとして「北京」が管轄する裁判権の下で裁判を受けるということになったということなのである。

これは逃亡犯条例改正案を、最悪の形で「北京」は完遂したことを意味している。

目的は全て、司法における「コモンロー体系からの脱却」である。

そのことは7月7日付のコラム「習近平はなぜ香港国家安全維持法を急いだのか?」で詳述した通りだ。

中国に、これを覆せなどと言っても100%「絶対に!」覆さないので、西側諸国に出来ることは、ポンペオが訪英の際に言った通り、西側諸国の価値観を持った国々が意思統一をして連携し中国に対抗していく以外にない。

日本は何をすべきなのか?

アメリカの説得があったのだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国務長官、4月2─4日にブリュッセル訪問 NAT

ワールド

トランプ氏「フーシ派攻撃継続」、航行の脅威でなくな

ワールド

日中韓、米関税への共同対応で合意 中国国営メディア

ワールド

米を不公平に扱った国、関税を予期すべき=ホワイトハ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中