最新記事

中国

ポンペオ猛攻──同盟国に香港犯罪人引渡し条約の停止要求か

2020年7月24日(金)20時42分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

訪英したポンペオ米国務長官(左)とジョンソン英首相(7月21日) Hannah McKay-REUTERS

21日のポンペオ訪英に合わせてイギリスは香港との犯罪人引渡し条約を暫時停止した。香港国安法は逃亡犯条例改正案を完遂してしまったからだ。アメリカはまずファイブアイズ系列から切り崩していくつもりだろう。

ポンペオ訪英とイギリスの香港との犯罪人引渡し条約暫時停止宣言

7月21日、訪英したアメリカのポンペオ国務長官は、ジョンソン首相等と対談し、香港問題を巡っ中国への対応などを協議した。ポンペオは「中国共産党に対抗するため、すべての国々と一致協力したい」と述べ、国際的な連携の必要性を強調した。

同時にイギリスは香港との間で交わされている犯罪人引渡し条約を停止したと発表した。

これに対して中国外交部の汪文斌報道官は定例記者会見で「中国はイギリスの誤った行動に強力な対抗措置を取る」、「中国はイギリスに対し、今後も香港に旧宗主国としての影響力を維持する幻想を捨て、直ちに誤りを正すよう求める」などと述べた。

中国側の抗議は激しく、「イギリスは独自の道を歩むべきで、アメリカ追随主義は止めろ!」と激怒している。

今年4月22日の時点で、香港との間で犯罪人引渡し条約を結んでいる国は19カ国ある。

香港政府のこのリストをご覧いただければわかるように、香港が中国に返還された1997年7月1日以降すぐに(1998年などに)条約を締結した国は「アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド」など、主としてファイブアイズの構成国が多い。

ファイブアイズは第二次世界大戦でドイツの暗号エニグマを解読しようとしたイギリスが、かつてのイギリス帝国の植民地を発祥とするアングロサクソン系の国々に呼びかけたもので、安全保障上の機密情報ネットワークだ。リストの中の早期に締結した国々は、かつてのコモンウェルス(イギリス連邦)構成国が多い(インド、シンガポール・・・など)。

これは何を意味しているかというと、香港が中国に返還されるときに、法体系をどうするかという議論があった。

香港の国際金融センターとしての地位を揺るがせないためには、当時香港で使われていたコモンロー(英米法)を引き続き使用することを中国は認め、イギリスは「司法に関してもコモンローに従うこと」を協議の中で「勝ち取った」のである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏メディア企業、暗号資産決済サービス開発を

ワールド

レバノン東部で47人死亡、停戦交渉中もイスラエル軍

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ

ワールド

ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 売春疑惑で適性に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中