イージス・アショア導入中止は、日米同盟を再考する絶好のチャンス
Japan Quits Aegis Ashore
将来的にはアメリカ製のF35ステルス戦闘機やLRASM対艦ミサイル、JASSM長距離ミサイルなどのほか、次世代戦闘機の共同開発、宇宙での戦力配備やいくつかの長距離ミサイルシステムの導入も取り沙汰されている。
どれも高くついてしまうが、新たなミッションや役割の遂行を通じて日米同盟を刷新することは間違いない。日本の安全保障に重要な役割を果たすはずだったイージス・アショア配備計画が撤回されるなら、前述した兵器などの導入についても似たようなことが起こると疑われかねない。これらの兵器がイージス・アショアと同じく高額で、技術的問題が発生する恐れがあるなら、なおさらのことだ。
やがて乗り越えられる壁
一方、イージス・アショア配備の契約金をどう処理するかという問題もある。契約に基づき日本政府は既に1億1200万ドルを支払っているが、計画総額の7割に当たる未払いの契約済み代金はどうするのか、違約金の支払い義務は生じるのかといった点については議論が必要だろう。
アメリカ側は厳しい態度で臨むだろう。ただでさえトランプは日本が同盟に「ただ乗り」していると批判しているし、在日米軍の駐留費の日本側負担を4倍に増やすよう要求したとも言われる。
日米同盟にとっては難しい状況だが、かといって同盟そのものが危機に瀕しているというほど、この一件の重要性は大きくない。しかも、日米はこうした対立を過去にも乗り越えてきた。
1980年代には貿易摩擦や為替レート、1980~90年代には次世代戦闘機の開発をめぐる問題があった。2000年代には海外派兵をめぐり日本により大きな貢献を求める圧力もあった。そして沖縄の普天間基地移設問題は20年以上続いている。イージス・アショア問題がそこに新たに加わるわけだが、これ以上重大化しなければやがて乗り越えられるだろう。
計画停止は絶好のタイミングだったかもしれない。11月には米大統領選がある。トランプが再選して両国の費用負担が引き続き問題となっても、あるいは政権が交代しても、地域の安全保障環境と国内事情を考慮に入れて新たな協力の形や役割を話し合う歴史的な時期なのではないか。
例えば、防空能力・ミサイルシステム全般や、地上型中距離弾道ミサイル配備の問題が論点になり得る。あるいは少なくとも、今回の件の再発を防ぐためアメリカからの兵器購入の仕組みの改善を追求することはあり得るだろう。
イージス・アショアの計画停止は日米同盟の難題になったようだ。同盟への打撃は避けられないが、致命傷には至らないだろう。日米関係はそれほどもろくはない。
<本誌2020年7月21日号掲載>
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