香港国家安全法という中国の暴挙を罰するアメリカの「最終兵器」
U.S. Preparing to Suspend Extradition Treaty With Hong Kong
オーストラリアとカナダも既に、香港との間で結んでいた犯罪人引き渡し条約を停止している。このことは、西側の多くの国にとって、香港の司法制度への信頼が既に「過去のもの」であることを示唆している。国家安全維持法が可決される前、香港は約20カ国との間に犯罪人引き渡し条約を結んでいた。このうちオーストラリア、ドイツ、イギリス、アメリカ、インド、シンガポールとマレーシアなどは、中国本土との間では犯罪人引き渡し条約を結んでいない。
イギリスのボリス・ジョンソン首相は、国家安全維持法の施行を理由に、300万人の香港市民に対して、イギリスでの就労ビザや市民権を申請できるようにすると表明。オーストラリア政府も同様の方針を表明し、また香港に拠点を置くオーストラリア企業に対して自国回帰を促した。
6月30日に可決された香港国家安全維持法は、香港で起きた「政治犯罪」取り締まりの管轄権を中国本土当局に引き渡すことで、事実上、香港から司法の独立性を奪うものだ。同法は、「非居住者」が海外で中国政府を批判した場合についても、中国政府に訴追の権限を認めている。つまり(同法に違反したと見なされた)外国人が、香港に入境した際、身柄を拘束される可能性があるということだ。
「最終兵器」について議論も
そして犯罪人引き渡し条約の停止は、今や中国の事実上の延長線上にある香港との、もっとずっと困難な関係の「幕開け」にすぎないかもしれない。香港は貿易と金融のハブとして、中国が世界的な金融システムにアクセスするのを助けてきた――これはトランプ政権からすれば、利用できるかもしれない「弱み」だ。そのためトランプ政権内部では、中国に対する制裁として、香港の米ドル購入を制限する案が検討されていた。実現すれば香港の米ドルペッグ制が揺らぎ、中国のドル調達やドル資産投資にも支障が出ると考えられるからだ。
「政権内部では、香港の銀行が容易にはドルを購入できないようにする措置に、本当に価値があるかどうかが議論されているようだ」と、戦略国際問題研究所の中国プロジェクト担当ディレクターであるボニー・グレーザーは言う。「実際にそのような措置を取った場合、金融ハブとしての香港の地位は弱体化することになるだろう。狙いは、中国が香港をビジネスに利用できなくすることだ」
だがグレーザーは、ペッグ制に打撃を与えるやり方は、香港の銀行と市民を苦しめることになると警告する。「本当にその最終兵器を使いたいのか。政権内部でもこの問題が議論されていると思うし、そうであることを願っている」
<追記>ブルームバーグは7月13日、この「ペッグ制攻撃案」については取り下げられたようだと報じた。
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