米国に再び医療崩壊の危機 感染第2波で一般患者が治療先送り
新型コロナウイルスの感染が再び拡大している米国で、病院が一般患者を受け入れられない、あるいは診療を先送りするケースが増えている。写真はカリフォルニア州オックスナードにある病院のICU病棟。7月9日撮影(2020年 ロイター/Sandra Stojanovic )
「テキサス州のある男性は、脳腫瘍がソフトボール大になるまで来院しなかった」「ある乳児は、6日間も耳の感染症に苦しんだ」「亡くなった人は心臓病があった」――。
米国各地から寄せられたこれらの事例は、新型コロナウイルス感染が再び急増する中で、新たな医療危機が発生していることを物語っている。病院がコロナ対応で手いっぱいになっている上に、患者も感染への恐怖から来院しない、あるいは緊急性のない病気と診断された場合、適切な治療を受けられないためだ。
実際、医師や病院の話では、いつもの決まっている治療や検査を受けに来る患者が激減している半面、本来よりも治療開始がずっと遅くなってしまった患者が増えている。
テキサス州ヒューストンで救急医療に携わる医師のダイアナ・ファイトさんは「日増しに強まる腹部の痛みを5日も我慢した末に、やっと病院を訪れた女性がいた。結局、来院した時点で、彼女の虫垂は破裂していた」と打ち明けた。
パンデミックに伴ってトランプ大統領が国家非常事態を宣言したのは今年3月。その後、多くの州が不要不急の医療行為を禁止したのに伴い、コロナ以外の不調で治療を求める患者の数が急速に減った。結果として病院は、財政的にも大きな痛手を被った。
米疾病対策センター(CDC)のデータによると、パンデミックが始まってから10週間で、救急外来の利用は42%減少。この間、心臓発作の治療を求める患者は23%、脳卒中の患者は20%それぞれ少なくなった。
新型コロナ感染拡大が一服した後、医療専門家はコロナ感染が再び増加した際の対応を見直して、がん検診などの軽い受診も受け入れ可能とし、病院や診療所が患者にとって危険でない場所であると安心してもらえるように計画を練った。
ところが最近、多くの州、特にテキサス、アリゾナ、フロリダと一部のカリフォルニアでは、病院がまたしても新型コロナ患者であふれかえる事態に見舞われている。