米国に再び医療崩壊の危機 感染第2波で一般患者が治療先送り
がん死亡者が増加か
テキサス州は、各種がん手術を容認しながらも、全体として緊急性のない医療行為を再び禁止した。カリフォルニア州サンホアキン・バレーのある病院は数日間、新型コロナ患者のみの受け入れを行った。
そこで新型コロナ以外の患者は、恐怖心や混乱がぶり返したり、もしくは必要な治療を受けにくくなったために、病院に行けないでいる。
テキサス州オースティンのがん治療施設のエグゼクティブ・バイスプレジデントで医師のデブラ・パットさんは、こうした事態が今後、多年にわたってがん死亡者の急増につながると予想する。患者が治療を先送りしてしまうからだ。
「患者はどうしようもなくなるまで、病院に行くのを怖がっている」と語るパットさんがここ数日で治療に当たったのは、体重が16キロ近く落ちて初めて来院した男性だ。頭痛とめまいが続くと訴えていたが、そのときには脳の腫瘍がソフトボールの大きさになっていた。
ヒューストンの救急医、ファイトさんも、両親が病院に連れてくるまで6日間も深刻な耳の感染症の症状が続いていた男の赤ちゃんを治療した。
パットさんによると、オースティンでは乳がん検診の受診件数が90%も減少した。つまり、かなりの乳がんが見逃され、手遅れの可能性が高まる段階になるまで本人が気づかない事態が出てくるかもしれず、今後のがん生存率に影響を及ぼすという。
オースティンで大腸がんの内視鏡治療を手掛けるデービッド・フリーガーさんは、ここ数日、予定していた内視鏡検査を多くの患者がキャンセルしてきたと明らかにした。その上で、今行うべき内視鏡検査の遅れが、最終的にさらなるがん進行と死亡者の増加につながるだろうと懸念を示した。
病院離れ
パットさんの患者のヘレン・クノストさんは、春の初めに予定していた乳がんの手術が延期になった。当時はテキサス州の基準で緊急性がないとみなされ、禁止対象になったためだ。代わりにホルモン療法の薬の投与を受けた。
クノストさんは結局、無事手術を終えた。とは言え「がんを患っていて、中ぶらり状態のままにされるのは非常におかしい」と憤る。
サンホアキン・バレーのアドベンティスト・ロディ・メモリアル病院(病床数150)の医師たちは、感染第2波が起きた場合、パンデミック当初の事態を繰り返さないと固く決意していた。当時、救急外来の患者は半減し、病院に搬送可能となる前に亡くなった心臓病の患者が、45%も増えたからだ。
ダニエル・ウォルコット最高経営責任者(CEO)は、地域社会に対して同病院は安全で開かれていると呼び掛ける運動の先頭に立ち、食料品店にまで出向いて声掛けをしていた。
ところが、足元では同病院にも膨大な新型コロナ患者が収容され、30人近くの職員が感染したため、数日にわたってコロナ以外の患者を他の施設に振り向けざるを得なくなった。
ウォルコット氏が今恐れているのは、心臓疾患などを持つ人たちがまた、来院しなくなる事態だ。「新型コロナウイルスへの恐怖のせいで、これから何年にもわたって、いったいどれだけ多くの患者の命や、彼らが生きている間に過ごせるはずの素晴らしい時間が失われるのか分からない」と嘆いている。
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