最新記事

新型コロナウイルス

米コロナ死亡率は欧州の17倍!トランプ発言は真っ赤な嘘

Americans Dying of COVID-19 at Rate Over 17 Times Higher Than EU, Canada

2020年7月29日(水)18時25分
ジェイソン・レモン

新型コロナの感染拡大中もトランプの選挙集会に集まった支持者たち(6月22日、オクラホマ州タルサ) Leah Millis-REUTERS

<トランプ政権はアメリカの新型コロナによる死亡者の割合は世界で最も低いと主張し続けているが>

アメリカで新型コロナウイルスの大流行が開始して半年以上。人口調整後のデータによれば、これまでのアメリカにおけるCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の致死率は、欧州連合(EU)とカナダの17倍以上になる。

オックスフォード大学の研究者らが運営しているサイト「アワ・ワールド・イン・データ」によれば、人口約3億2800万人のアメリカでは、新型コロナウイルスによる死者が、毎日100万人当たり平均約3人となっている。

一方、人口約4億4,600万人のEU場合、1日の死亡者数は100万人当たり0.18人。したがって、アメリカにおける新型コロナの死亡率はEUの約17倍を超えている。人口3800万人弱のカナダも新型コロナによる1日あたりの死亡者は100万人当たり0.16人にすぎない。

ニューヨーク・タイムズ紙の統計によれば、アメリカにおける新型コロナによる死者は、7日間の平均で1日あたり1000人以上。カナダでは7日間の平均は1日あたり約6人だ。

ジョンズ・ホプキンス大学の分析によると、新型コロナの感染拡大が起きている国の中で、アメリカの新型コロナによる死亡率は4番目に高く、人口10万人当たり45.24人が死亡している。1月末にEUから正式に離脱したイギリスは、感染が広がった国のなかで死亡率が最も高く、10万人当たり68.95人が死亡、それに続くペルーは10万人当たり57.58人、チリは49.05人が死亡している。

<参考記事>「BCGは新型コロナによる死亡率の軽減に寄与している可能性がある」と最新研究
<参考記事>日本の「生ぬるい」新型コロナ対応がうまくいっている不思議

死亡率は最低とトランプ

全米で感染者数が急増し、死者数も増えているというに、ホワイトハウスは、アメリカにおける死亡率は世界で最も低い、と真実とは程遠い主張を繰り返してきた。

ホワイトハウスのケイリー ・マケナリー大統領報道官は7月6日、保守系メディアFOXニュースに対し、「わがアメリカ社会は前進した。新型コロナ感染者の死亡率は全世界で最も低い。ドナルド・トランプ大統領もこの後、ツイッターで同じ嘘を流した。

7月19日に放映されたFOXニュースのインタビューで、トランプはこの間違った情報を繰り返し、「アメリカの死亡率は世界的に見てかなり低いほうだと思う」と発言した。だが司会のクリス・ウォレスは事実を確認し、その情報は間違っていると指摘した。

それに対しトランプは言い張った。「アメリカの死亡率は世界最悪だと君は言うが...、一番低いはずだ」とトランプは言い張った。

本誌はホワイトハウスにコメントを求めたが、回答はまだ得られていない。

アメリカの新型コロナウイルスによる感染者と死亡者の数は世界で最も多い。7月28日の時点で確認された感染者は430万人以上、死者は15万人近く。新規感染者数の7日間の平均は1日あたり6万5000人を超えている。27日には1696人の死亡が報告された。

(翻訳:栗原紀子)

【話題の記事】
科学者数百人「新型コロナは空気感染も」 WHOに対策求める
中国のスーパースプレッダー、エレベーターに一度乗っただけで71人が2次感染
傲慢な中国は世界の嫌われ者
「中国はアメリカに勝てない」ジョセフ・ナイ教授が警告

20200804issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年8月4日号(7月28日発売)は「ルポ新宿歌舞伎町 『夜の街』のリアル」特集。コロナでやり玉に挙がるホストクラブは本当に「けしからん」存在なのか――(ルポ執筆:石戸 諭) PLUS 押谷教授独占インタビュー「全国民PCRが感染の制御に役立たない理由」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...スポーツ好きの48歳カメラマンが体験した尿酸値との格闘
  • 4
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 5
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 8
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 9
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 10
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中