スペースXの衛星ネットワーク「スターリンク」は、世界の情報格差を解消できるか?
軌道上で稼働可能なスペースXの衛星は530基を超える
<イーロン・マスク率いるスペースXでは、次世代型衛星ネットワークを構築する「スターリンク」計画を着々とすすめている......>
アメリカの実業家イーロン・マスクが率いる民間宇宙企業スペースXでは、小型通信衛星を高度540〜570キロメートルの低軌道に送り込み、次世代型衛星ネットワークを構築する「スターリンク」計画をすすめている。
2020年6月3日、8回目のミッションで米ケネディ宇宙センターから約60基を打ち上げたのに続き、13日にも、9回目のミッションとして約60基を低軌道に送り込んだ。これにより軌道上で稼働可能な衛星は530基を超える。また6回目までに打ち上げられた衛星、合計360基の位置は「starlink satellite map」に示されている。
2020年末までにブロードバンドインターネットサービスを開始予定
連邦通信委員会(FCC)は、スペースX に対し、2018年に小型通信衛星11943基の運用を認可し、2020年3月には、この衛星ネットワーク用地上基地局を100万カ所設置することも承認している。
スターリンクは、低軌道に多数の通信衛星を配置して大規模なネットワークを構築し、通信衛星の間で情報をやりとりさせる仕組みで、地上のインフラに制約を受けず、世界中に高速ブロードバンドインターネットを提供できるのが特徴だ。2020年末までに北米でサービスを開始し、2021年以降、世界で展開する計画となっている。
スターリンクのような低軌道通信衛星によるインターネットは、気象に影響を受けやすく、高価な既存の衛星インターネットに比べて、レイテンシ(通信の応答時間)が低いとされている。同様の衛星ネットワークの構築に取り組むスタートアップ企業ワンウェブでは平均レイテンシが32ミリ秒を記録した。
しかし、この数値は、平均レイテンシが12〜20ミリ秒の光通信に比べると劣っている。スターリンクのレイテンシは現時点で明らかになっていないが、米国のブロードバンド市場への参入を目指すならば、「平均レイテンシは20ミリ秒未満とする」という既存の基準を下回る必要があるだろう。
デジタルデバイド解消基金の基準を満たすか?
連邦通信委員会は、2020年1月30日、米国の地方部での高速ブロードバンドインターネットの普及を推進し、デジタルデバイド(情報格差)の解消につなげる基金「地方部デジタル機会基金(RDOF)」を創設。今後10年にわたって、地方部での高速ブロードバンドネットワークの構築に総額204億ドル(約2兆1800億円)を投じる。
この基金は、低軌道通信衛星を活用したブロードバンドインターネットも対象となっており、スペースXはその応札に関心を示している。これに対し、連邦通信委員会は、6月9日、「スペースXを含め、衛星インターネット・プロバイダーにも応札する権利はある」と述べる一方で、「『レイテンシは100ミリ秒を下回らなければならない』とする応札基準をスペースXが満たすかどうかについて判断する必要がある」との見解を示している。
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