韓国の弱腰対応が北朝鮮をつけ上がらせている
North Korea’s Explosive bullying
北朝鮮はホットライン切断に続き、南北共同連絡事務所のビルを爆破(6月16日) KCNA-REUTERS
<体制批判のビラを飛ばしていた脱北者団体を刑事告発するなど、北朝鮮の言いなりになる韓国政府。北は侮辱と脅しの外交に回帰した。南北関係悪化を恐れ、市民の自由を犠牲にする文政権の過ちとは>
独裁者は批判されると怒りを爆発させるもの。北朝鮮の最高指導者も例外ではない。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長について絶賛以外の言葉を発しようものなら、監獄送りになりかねない。
先日も韓国とのいさかいを機に、北朝鮮の怒りが文字どおり「爆発」した。6月16日、韓国との軍事境界線近くの開城(ケソン)に設置された南北共同連絡事務所を爆破したのだ。
北朝鮮は、対話が無意味であるとし、欲しいものは力ずくでも手に入れるスタイルに回帰するというメッセージを明確に発信している。それでも韓国は、そんな北の態度を後押しするような対応を繰り返すばかりだ。
韓国政府は6月11日、北の体制を批判するビラを風船に付けて北朝鮮に向けて飛ばしていた脱北者団体を刑事告発した。北の要求に応じたこの判断は、市民の知る権利を奪い、北朝鮮をつけ上がらせるだけの弱腰の対応だ。
2000年に平壌を訪問した金大中大統領の時代を別にすれば、韓国は長年、北朝鮮に対して敵対的で非生産的な政策を取り続けてきた。しかし、文在寅(ムン・ジェイン)政権は金大中の太陽政策を踏襲するような穏健路線に転じ、南北関係は2018年に劇的に好転した。
ところが2019年のベトナム・ハノイでの米朝首脳会談決裂を境に、南北関係にも再び亀裂が発生。最近の北朝鮮は韓国を無視するか、侮辱するかを繰り返している。
一方、韓国は沈黙を守っている。かつては軍事境界線付近でプロパガンダやKポップを大音量スピーカーで流していたが、この作戦は南北の緊張緩和を目的に2018年に中断された。
ただし、脱北者団体は活動をやめなかった。彼らが得意とする風船でビラを飛ばす手法の効果は不明だが、北朝鮮の怒りから、無検閲の情報が流入するのを警戒していることがうかがえる。
金の妹で北朝鮮の宣伝活動の事実上の責任者である金与正(キム・ヨジョン)労働党中央委員会第1副部長の言動からも、警戒ぶりは明らかだ。金与正は6月4日の談話で韓国政府にビラ散布の停止を要求し、聞き入れられない場合は対抗措置を取ると激しい言葉で脅した。
パニックに陥った韓国
さらに北朝鮮は9日、両国の首脳と軍の連絡手段であるホットライン(直通電話回線)を切断。「韓国とのあらゆる連絡手段を完全に切断し、不要なものを排除する決意を示す第1段階」と説明し、16日の南北共同連絡事務所の爆破へと向かっていった。
北朝鮮は臆病な韓国政府への圧力をじわじわと強めながら、巧みにゲームを進めている。一方の韓国側はパニックに陥っているようだ。
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