「他国に厳しく自国に甘い」人権軽視大国アメリカよ、今こそ変わるとき
America the Unexceptional
多くの民主国家には既に人権機関が設置されているが、権限や実績、独立性の程度はさまざまだ。フランスでは最近、独立機関である全国人権諮問委員会がヘイトスピーチ関連法案について、検閲につながる恐れがあるとして批判したが、議会は可決に踏み切った。あるいはメキシコなどのように、人権侵害に関する訴えを個々に審査・判断する機関も多いはずだ。
第2に米議会は、国際条約を批准したなら、それに対応する国内法の制定を推進すべきだ。特に履行すべきなのは「人種差別撤廃条約」と「市民的および政治的権利に関する国際規約」だ(「拷問等禁止条約」には既に着手している)。これによって国内の裁判所は、条約を基にした訴えを審議できるようになる。市民は警察に権利を侵害されても、国際法に基づいて救済手段を求める権利を手にする。
第3にアメリカは、これまで拒否してきた条約の批准を全て実行すべきだ。特に女性差別に対する権利や、子供、移民、障害者の権利に関する国際条約だ。これらの大半は国内法にも沿っている。批准していないのは怠慢でしかない。
第4に、アメリカ人は市民権と政治的権利については冗舌に語るが、労働や賃金、医療、教育の基本的権利について国内外で共通するビジョンには言葉を濁す。アメリカは「経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約」も批准し、腐敗や富の集中、国内外の既得権層がもたらす不公平や貧困、非人道的な対応を防ぐ政策を打ち出すべきだ。
最後に、アメリカは人権問題に関与することで初めて、人権に関して本当に世界的な発言権を得られるようになる。ドナルド・トランプ大統領は稚拙な考えによって、国連人権理事会から離脱した。人権について独自の社会基盤を構築するなら人権理事会に復帰し、世界中の人々の人権を擁護する建設的な役割を果たすべきだ。根深い権威主義や、中国などが推進する反人権思想に抗議の声を上げるべきだ。
「ブラック・ライブズ・マター」を叫ぶデモ参加者は、アメリカが「丘の上の光り輝く町」に生まれ変わる必要性と可能性を示している。それは政府が市民のために働く国であり、法に反して人の命を踏みにじった者には相応の責任を負わせる国であり、人種差別を根絶して平等を促進する国だ。そのためには、アメリカの人権政策に内在していた差別的要素を取り除くことに取り組むべきだろう。
これらを実現するには法と政策を変えなくてはならない。その動きは、人権が支え、維持してくれる。
(筆者は国連人権理事会から任命された「表現の自由」に関する特別報告者)
<本誌2020年6月23日号掲載>
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