「コロナ優等生」韓国の病巣は経済──構造改革を進めない文在寅政権
SOUTH KOREA’S POST-PANDEMIC ECONOMY
文在寅大統領の左寄り経済対策は的外れ KIM MIN-HEE-POOL-REUTERS
<国際的に評価された韓国のコロナ対策だが、社会活動の大幅な抑制は、例に漏れず内需と雇用の弱体化を招いた――韓国政府はこの危機を体質転換の好機とできるか>
韓国はCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)との戦いに勝利を収めているようだ。ここ数週間の1日当たりの新規感染者数は2桁にとどまり、今後も抑制できる公算が高い。今の韓国にとってより大きな問題は、経済の落ち込みだ。
2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)と2015年のMERS(中東呼吸器症候群)の流行を乗り越えた韓国の指導者は、新型コロナウイルスの封じ込めには、迅速かつ積極的な行動が必要であることを知っていた。
そのため、ウイルスの遺伝的配列が判明した3週間後には検査キットを素早く承認。大規模な検査と集中的な接触者追跡プログラムを展開し、携帯電話のGPS記録、クレジットカードの決済情報、監視カメラ映像を駆使して、感染の可能性のある人々を特定し、リスクのある人に通知した。
社会規範に従い、強力な政府介入を肯定的に受け入れる韓国人は、厳しい封じ込めに進んで協力した。公共の場でマスクを着用し、社会的距離を実践し、プライバシーを犠牲にして接触追跡に応じた。感染者と確実に接触した人々は、自主隔離を行った。
内需と雇用は弱体化
一方で韓国の感染症対策は、社会活動を大幅に抑制したことで内需と雇用を弱体化させるというマイナス面も持ち合わせていた。今年4月の雇用は、前年同月比で約47万6000人減と、1999年2月以降で最大の減少幅を記録した。
もちろん、これは韓国だけの問題ではない。世界経済全体が打撃を受け、外需は急速に縮小している。だが輸出頼みの韓国経済にとってはまずい状況だ。世界貿易の縮小により韓国の4月の輸出高は前年比24.3%減少し、世界金融危機後以来の急激な減少となった。IMFも、2020年に韓国のGDPは1.2%縮小すると予測。景気後退は避けられない。
韓国政府も手だては打っている。個人や企業を支援し、消費を押し上げるために総額245兆ウォン(約22兆円)の大規模な財政刺激策を導入。韓国銀行は政策金利を最低水準の0.5%に引き下げた。
だがどんなに大胆な刺激策も、パンデミック(世界的大流行)の経済的影響を相殺できるほどではない。コロナ禍以前から韓国の経済成長率は低下の一途をたどり、2019年にはわずか2%になっていた。その理由の1つは世界最速の高齢化だ。2019年の韓国の合計特殊出生率は0.92人と、史上最低となった。韓国統計局によると、生産年齢人口は2018年をピークに、2046年には30%以上減少する。