最新記事

ドイツ

ドイツで知名度をあげたウイルス学者は、コロナ予防策への激しい反発にあっている

2020年6月3日(水)19時30分
松岡由希子

この研究成果に対して、独タブロイド紙「ビルト」は、この研究成果に異を唱える学者からのコメントを引用しながら、「休校措置を推し進めるために研究結果をでっち上げた」と主張し、ドロステン所長を非難している。

また、ドロステン所長や他のウイルス学者は、穏健派の政治家からも信用されていない。ドイツで最も人口の多いノルトライン=ヴェストファーレン州のアルミン・ラシェット州首相は、厳格なロックダウンに反対している。

専門家たちは、身の危険すら感じている。ドロステン所長は、4月26日、英紙ガーディアンのインタビューで「多くのドイツ人にとって、私は経済に大きな損失を与える悪人なのだろう」と述べ、殺害の脅迫を受けていることを告白した。ドイツ社会民主党(SPD)の国会議員で疫学者のカール・ローターバッハ氏は、5月26日、自分に宛ててドイツ連邦議会に届いた茶色の小包の画像をツイッターに投稿。液体入りの小瓶と「これを飲めば、免疫が獲得できます」と書かれた匿名のメモが入っていたという。ドロステン所長もツイッターで、同様の小包を受け取ったことを明らかにしている。

「科学は社会において知識の翻訳に常に努めるべきである」

独ゲオニク・アウグスト大学ゲッティンゲン(GAU)の助手ミハエル・ルーマン氏は、独メディア「ドイチェ・ヴェレ」の取材に対し、「科学の論理的プロセスへの理解を深めることが重要だ」と指摘。「議論は知識の探究の一部であり、科学は社会において知識の翻訳に常に努めるべきである」としたうえで、「科学は、政治的な指針を自動的に提供するものではないが、科学的知識から導き出される助言を行うことを恐れるべきではない」と述べている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米2月求人件数、19万件減少 関税懸念で労働需要抑

ワールド

相互関税は即時発効、トランプ氏が2日発表後=ホワイ

ワールド

バンス氏、「融和」示すイタリア訪問を計画 2月下旬

ワールド

米・エジプト首脳が電話会談、ガザ問題など協議
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中