ブラジルのコロナ無策は高齢者減らしのため?
Brazil Government Aide Says COVID-19’s Toll on Elderly will Reduce Pension Deficit
今や新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の中心地は、ブラジルはじめ南米諸国に移りつつある。米ワシントン大学保健指標評価研究所のクリストファー・マリー所長は今週、ブラジル政府に対し、このままでは8月4日までにCOVID-19による死者が12万5833人に上ると警告し、強制力のある措置を取るよう呼びかけた。
「ウイルスの急速な広がりを制御し、人から人への感染を減らすために、ブラジルは中国の湖北省武漢やイタリア、スペイン、ニューヨークのような厳しい禁止措置を取らなければならない」と、マリーは声明で訴えた。「さもなければ、ブラジルの死者は増え続け、重要な医療資源が不足し、感染爆発は7月中旬まで続くだろう」
エール公衆衛生大学院のアルバート・コー教授(疫学・医学)は保健省をはじめ25年余りブラジル政府の顧問を務めてきた。
ブラジルは伝統的に感染症対策に力を入れてきたと、コーは本誌に語った。種々のワクチン接種率では、南北米大陸でも1、2位を争うこの国で、新型コロナウイルスがここまで猛威を振るうとは思ってもいなかったと、コーは言う。
「非常に残念だ。このままではとても悲惨な状況になる。唯一の救いは、一部の州が独自にロックダウンに踏み切ったことだ」
貧困層が犠牲に
おかげで北東部のバイア州や南東部の都市ベロオリゾンテは、感染者を国内最少レベルに抑えられているという。
「禁止措置を取っていないその他の州では、ウイルスの勢いは止まらず、酷い状況になっている。連邦政府の方針転換で、地方の保健当局者の士気は低下し、多くの専門スタッフが職場を去った。人員不足でまともな対応ができなくなっている」
コーによれば、感染者数の正確な把握もままならず、「どの地域が最も深刻な打撃を受けているか分からない。これでは対策の取りようがない」感染が疑われる人が検査を受けられないため、事態はさらに悪化している。
「そのツケをまともにくらうのは、社会の主流から置き去りにされたスラムの住民だ」
ドイツの統計調査会社スタティスタによると、5月26日時点で確認された感染者数でブラジルはアメリカに次いで世界第2位となっている。
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