最新記事

芸能

NEWS手越祐也「活動自粛」に見るジャニーズ事務所の危機管理能力

2020年5月28日(木)17時00分
木村 隆志(コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者) *東洋経済オンラインからの転載

やはり今回の活動自粛は、「問題行動のあった個人を甘やかし、繰り返させたことで、組織全体のイメージを悪化させ、そこで働く人々が不満を抱えてしまった」という典型的なパターン。組織の管理職が1度目のときにはっきりとイエローカードを出し、2度目はレッドカードを出すことを毅然とした態度で伝えておかなければなりませんでした。

少なくとも問題行動が続いた5年前や3年前の時点でそれができていたら、その後スキャンダルのない手越さんは、現在をはるかに上回るスターになれていたかもしれません。管理職の指導1つで社員の未来を広げることも狭めることもあり、その意味で現在の手越さんは自らのポテンシャルを十分に発揮できていないのではないでしょうか。

特にジャニーズ事務所は管理職に加えて、先輩タレントの層が厚く、手越さんにとっては学べる存在が多かったはず。そんな頼れるはずの先輩たちから「突き放されていたのか」、それとも手越さん自身が「距離を取っていたのか」は分かりませんが、成長や才能開花のチャンスを逃す要因となっていることが悔やまれます。

「自由を求めるなら独立しろ」の正論

ここまで芸能事務所や一般企業などの組織目線で書いてきましたが、視点を個人に変えると、手越さんの煮え切らない思考回路が浮かび上がってきます。

活動自粛の報道を知った人々から、「そんなに自由がほしいなら事務所を辞めればいいのに」「他の所属タレントと足並みを揃えられないなら独立したほうがいい」などの声が挙がっていました。それらの声はまさに世間の声であり、手越さんから見たら言い返せない正論。「これまでどんなスキャンダルを起こしても事務所に守られてきた」ことを知っているからこそ、「大きな組織で甘い汁を吸いたいのなら、社や同僚に迷惑をかける自由気ままな振る舞いはするな」と言いたいのでしょう。

これは一般企業も同じで、手越さんのように自由気ままな振る舞いは、よほどの成績を挙げる社員でない限り許容されません。自由気ままに振る舞って社のイメージや同僚のモチベーションを下げてしまうことは認められず、独立して起業する道を選ぶ潔さが求められているのです。

しかし、手越さんは新型コロナウイルスの影響が深刻化してもジャニーズ事務所に所属したまま、問題行動を繰り返してしまいました。だからこそ世間の人々は、「毅然とした対応をした滝沢さんには好感が持てる」「タッキーがいる限りジャニーズ事務所はこれからいい会社になるかも」などと、処分を決めたとみられる滝沢秀明さん(ジャニーズ事務所副社長)を称えるコメントを発しているのでしょう。やはり管理職の決断には、「遅かったとしても、するべきことがある」「負の流れが続いていたのなら、それを断ち切る勇気が必要」であり、ひいてはそれが組織のイメージを回復させる第一歩となるものです。

ただ、「ほとぼりが冷めたら、またシレッと復帰させるんでしょ」「腐ったリンゴは早く取り除かないと周囲まで腐敗しかねない」などの辛らつな声も多く、不信感を払拭し切れたわけではありません。手越さんとジャニーズ事務所は、今後も引き続き注目を集めていくでしょう。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。
toyokeizai_logo200.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏「ロシアは戦争継続を望む」、条件付き

ワールド

米、プーチン氏と生産的な協議 ウクライナ紛争終結の

ワールド

米・イスラエル、ガザ住民受け入れ巡りアフリカ3カ国

ビジネス

ECBの4月据え置き支持、関税などインフレリスク=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ世代の採用を見送る会社が続出する理由
  • 2
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 3
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の「トリウム」埋蔵量が最も多い国は?
  • 4
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ…
  • 5
    中国中部で5000年前の「初期の君主」の墓を発見...先…
  • 6
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 7
    自分を追い抜いた選手の頭を「バトンで殴打」...起訴…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「天然ガス」の産出量が多い国は…
  • 9
    「紀元60年頃の夫婦の暮らし」すらありありと...最新…
  • 10
    SF映画みたいだけど「大迷惑」...スペースXの宇宙船…
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 6
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 7
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 8
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中