シンガポール、新型コロナウイルス対策に「穴」 置き去りにされた外国人労働者間で感染拡大
失われた早期発見の機会
一部の外国人労働者が頼りにしてきたのは、政府が補助金を出して慈善団体が運営する「ヘルスサービス」と呼ばれる医療制度だった。診察料は8シンガポールドル(約600円)と、国立病院の約50シンガポールドルより格段に安い。
しかし、政府は2月7日、公立病院の職員の働き場所を1つの病院に限定するよう命令。ヘルスサービスは、必要な人員を確保できなくなくなるため、事業を縮小せざるを得ないと発表した。その後、サービスの90%を削減し、診療所3カ所のうち2カ所を閉鎖したとしている。
ヘルスサービスのジェレミー・リム医療サービス委員長は政府に対し、ボランティア医療従事者が減少すると訴えたものの、できることはないと突き放された。リム氏は、格安の医療サービスを提供し続けていれば、外国人労働者社会での感染をもっと簡単に早期発見できていたと悔しがる。
1部屋に12人ないし20人が暮らすことさえ珍しくない外国人労働者の住居は、2月に政府が全世帯を対象にするとして打ち出した、マスク配布の対象にもならなかった。
リム氏は、政策対応から外国人労働者が抜け落ちていたことを「今になって社会全体として後悔し始めている」と話した。
政府は、労働者が発熱していないか監視するよう外国人労働者の管理者に勧告したり、公共の場所に集まらせないようにするなど、対策を相応に取ってきたと主張する。
テオ人材開発相は9日、政府が外国人労働者を巡る問題について、何の手も打ってこなかったわけではないと弁明した。
ロイターが取材した6人の外国人労働者は、発熱チェックや社会距離(ソーシャル・ディスタンス)の確保といった予防措置は、厳格に実行されていない、あるいは最近になってようやく導入されたとしている。
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